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トップランナー紹介

トップリバー 嶋﨑秀樹氏

Update : 2018.07.31

儲かる農業で雇用を創造 独立を志す若手農業者を育成

長野県を拠点に、日本の未来を担う農業経営者を育てる農業生産法人がある。有限会社トップリバー(本社・御代田町 農場・御代田農場/富士見農場)。八ヶ岳の裾野に広がる富士見農場で、炎天下収穫作業に励む若者たち。ここで彼らは、レタスをはじめとする高原野菜の栽培を通じて「農業経営のイロハ」を学んでいる。
彼らを研修生として雇い、独立するまでのサポートを行っているのが嶋﨑社長。始まりはおよそ20年前、先ず目指したのは“儲かる農業”だった。

ターニングポイント
“儲かる農業”の追求が人材育成の鍵

嶋﨑社長が製菓メーカーの営業マンを辞め、脱サラして就農した当時、4名の若者がいた。彼らは、社長が会社から帰っても休む事もなく働いていたのだという。それを見ているうちに、彼らの目標は“農業で生活をしたい”ということだと気づく。

そして“一生懸命やれば儲かるんだ”という農業を実現すべく10年間活動を続けた。合言葉は“農業で幸せになろう!”
嶋﨑社長は、サラリーマン経験を活かして、マーケットインを意識した営業に力を入れていった。

収穫作業に励む研修生

“トップリバー流”ビジネスモデル
顧客のニーズに応える農業生産方式を確立

売り先がなければ当然モノは売れない・・・。そこで嶋﨑社長は、加工業者との契約栽培・販売へと乗り出すことを決意する。こうして価格決定権を持たない従来型の農業生産方式から脱却を図った。

さらに、自社の主力生産品であるレタスに付加価値をつけるため、加工・業務用向けには“大玉”を納入。収穫の際に不要な外葉を取り除くことで、キロ単価を上げることにも成功する。

また社長は、高品質の野菜を卸すためコールドチェーンの構築にも力を入れた。“野菜の鮮度”を保つために、野菜を5℃まで急速冷却できる真空予冷装置と大型冷蔵庫を導入。これにより輸送中の品質の劣化を抑制し、鮮度を長く保てるようになった。

これら、マーケットイン型農業を実現し、高品質な野菜の安定供給を武器に“農業で幸せになる”ためのノウハウを培ったのである。

上写真:富士見農場で収穫された大玉のレタス
下写真:真空冷却装置を備えた大型冷蔵庫

“トップリバー流” 成長戦略
農業雇用学で日本の農業を変える!

農業は一人ではできない。従業員を雇用し、利益を出すことが規模拡大につながる。そこで重要になるのが、“農業雇用学”である。「この先10年で一番大切なものは、“農業雇用学”。これが出来る地域・組織・人材が日本の農業を変える」と、嶋﨑社長は言う。嶋﨑社長が提唱する農業雇用学とは、生産・営業・組織マネジメントを実行し、地域活性化のためパート従業員を雇用し、育成していくための経営学だ。

例えば、経営者としてパート従業員の業務内容をマネジメント。農業雇用学では、パートを雇いまず教育し、いい人材を社員とする。パートが社員と同じように意識高く働けば生産性が上がる。さらに、農地の収穫量や人件費などのコストそこから損益計算をし、売上とコストをデータ管理する。一人の経営者として自立するためには利益を出さなければならない。コスト・売上を理解する、それが出来るようになることが農業経営者として重要である。

卒業生に話を聞くと、「農業で独立するには経営の視点が必要。簿記や雇用に関することや、畑で体を使う作業は誰でもできるが、それ以外の知識が経営者には必要。それがトップリバーに入ってわかった。」と語った。

経営を学ぶ研修生

トップリバーの社員の多くは、Iターンの転職者だが、現在は、新卒で就農を目指す若者も多く就職している。若くして現場を任されている研修生の志も高い。

ある研修生は、「(就農前の)22歳の時は、この先の人生が見いだせなかった。トップリバーに就職してから自分がやるべき目標が明確となった。現在4年目で、あと2年ほど経験を積み、良い野菜を安定供給できる自信がついたら独立したいと考えている。」と語る。

これら、農業雇用学を基に経営者・社員・パート従業員の三者が密に連携する農業形態こそが、トップリバーの強みである。

上写真:独立の目標を語る研修生
下写真:生活を共にする研修生たち

かねてより高齢化による農業生産力の衰退を実感していた嶋﨑社長。だからこそ、農業での収益向上、雇用創出、そして次世代の担い手の育成に力を入れ、社会や地域の維持発展に貢献し得る事業を目指したのだ。

「農業雇用学の基本は“心”、感謝の気持ちが必要なのです。同じ仲間として心が伝わらないと人を育てる上で壁ができる。現在30名以上の若者が北海道から鹿児島で活動しているが、誰一人として農業を辞めていない。」と嶋﨑社長は語る。

「農業100年の計は人材育成にあり」

農業を持続可能な産業とするためには、経営感覚を持った農業者の育成が不可欠。未来の農業を担う若手経営者を育てるトップリバーの挑戦はこれからも続く。

嶋﨑秀樹氏プロフィール

1959年長野県生まれ。82年日本大学卒業後、北日本食品工業(現ブルボン)に入社。88年にブルボンを退社後、佐久青果出荷組合に入社(後に社長就任)。2000年に農業生産法人トップリバーを設立、9年で年商10億円の企業に育て上げる。「農業をマネジメントする」という発想で、儲からないといわれた農業を「儲かるビジネス」として実証し、新規就農者の育成、独立支援を行いながら、日本の新しい農業のあり方を提言し続けている。長野県農業法人協会会長、日本農業法人協会理事など歴任。

「有限会社トップリバー」データ

年  商: 13億9000万円(平成28年度実績)
従業員数: 45人(正社員のみ)
トップリバーHP: https://www.topriver.jp