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トップランナー紹介

恵那川上屋 鎌田真悟氏

Update : 2018.10.05

恵那栗のブランド化で躍進!100年先も愛される里の栗づくり

岐阜県・恵那市。
この地に地域の生産農家と連携し、栗のブランド化に力を注いでいる菓子製造会社がある。
株式会社・恵那川上屋。その取り組みは、茶巾のような形が特徴の地元の銘菓、「栗きんとん」の味を取り戻したいと考えた鎌田社長の思いから始まった。

恵那川上屋本店

ターニングポイント
栗の里だった恵那を取り戻す

この地は古くから栗栽培が盛んな場所で、栗きんとんを売る和菓子店が数多くあった。

しかし、流通網の発展により県外の百貨店への出店が増えると、地元の栗だけでは足りなくなり、他県の栗を仕入れるようになった。その結果、地元の栗が安く買い叩かれるようになり、多くの栗農家が廃業に追い込まれた。さらに、他県の栗を使ったため、栗きんとんの味が昔とは全く違うものになってしまったのだという。

「先ずは、社会や地域、そして地元の人々のためになる事を三本柱として考えました。それら3つのことを実現するためには、もう一度、この地域の栗を復活する必要があると考えたんです」と鎌田社長は語る。

“恵那川上屋流”ビジネスモデル
栗農家が儲かる契約栽培

1998年、鎌田社長は驚きの契約栽培をはじめる。
それは、栗の仕入先である生産農家との間で、厳しい「栽培・出荷条件」を定め、その条件をクリアした農家の栗を、通常の倍の価格で買い取るというものだった。

「良い栗をつくり、良い選別を行い、大きな栗を出荷すれば、全ての栗を恵那川上屋が買い取ってくれるという仕組みになっているので、不良果を1〜2%に抑えるように選別をしています」と栗生産者は語る。良質な栗をつくれば高く売れる。生産農家のマーケットインの意識が向上したことで歩留り率が格段にアップした。

さらに、栽培条件としては「土づくり」の段階から徹底管理され、「超低樹高栽培」と呼ばれる剪定技術を導入することが求められる。超低樹高栽培とは、効率的に枝を払うことで、樹木に日光がよく当たるようになり、栗の実が大きく成長するようになる剪定技術のこと。こうして栗の収穫量も増え、安定供給が実現したのである。

「超低樹高栽培は、“栗の第二の始まり”とも言えるものなんです。この技術を様々な地域で指導していくことで、日本の栗を将来に残していこうと考えました。そんな中、県と農協が剪定士や指導者の資格制度を設立してくれたんです」と鎌田社長は語る。

栗の生産現場をイノベーションすることによって、生産者・地域・そして栗産業が活性化。そうして生まれた地域の自慢が「超特選恵那栗」である。

超低樹高栽培

超特選恵那栗規定

左写真:超低樹高栽培 右写真:超特選恵那栗

「菓子で使用するための栗は、でんぷん質が糖に変わってはいけないんです。採れたてのでんぷん質が強い状態で加工することが弊社の特徴となっていますが、早く加工するためには、地元しかないんです」と鎌田社長は言う。

栗の鮮度を保つために先ずは、生産・加工・販売の全てを地元で行うことからスタート。収穫した栗を24時間以内にペーストへ加工し、加工しきれなかった生栗はCAS冷凍システムを使って保存することで、いつでも採れたての美味しさをキープすることに成功した。

こうしてつくりあげたサプライチェーンにより、鎌田社長が子供の頃に食べていた、栗きんとんの味を取り戻すことができた。

今ではモンブランをはじめ、様々な大人気商品を生み出している。

上写真:栗の選別 下写真:栗きんとんの製造ライン

恵那川上屋の栗をつかった和洋菓子

“恵那川上屋流”成長戦略
日本全国に栗の里を拡大

100年先も愛される里の栗づくりを目指し鎌田社長は、培ったビジネスモデルを全国へと展開。北は北海道から南は九州と加工場や超低樹高栽培を広めていった。

さらには、信州伊那栗を使った菓子で人気の「信州里の菓工房」(長野県)や世田谷栗で作った菓子を販売する「恵那川上屋 二子玉川店」(東京都)などの直営店を設立。栗を使った地域の菓子文化づくりにも貢献している。

「採れたての栗の加工を実現していくことで、卸し先となる菓子店や業者にも品質の良さや価格の安さを認めてもらえるようになりました。これまでは栗を全て我が社が買い取って加工して販売をしていましたが、これからは、他の菓子店とも協力しながらやっていきたいと思っています」と鎌田社長は言う。

鎌田社長の地域の菓子文化への取組みは栗だけにはとどまらない。種子島産のサトウキビからは、同社の菓子製造に最適な良質の黒糖が作られる。その黒糖や安納芋で作った菓子を販売する「種子島里の菓工房」(鹿児島県)も設立。さらなる地域の食文化を生み出す活動として期待されている。

上写真:恵那川上屋 二子玉川店
中写真:信州里の菓工房
下写真:種子島産の黒糖

失われつつあった恵那の栗を蘇らせた鎌田社長。
彼の次の目標は、「和栗」を世界に向けて発信していくこと。今日も鎌田社長はその目標達成へ向け、日本にとどまらず、新たな価値の創造を求め世界各地を飛び回っている。

鎌田真悟氏プロフィール

岐阜県生まれ。高校卒業後、東京で洋菓子修行、地元中津川での和菓子修行を経て、現在の前身の有限会社ブルボン川上屋に入社。著書に「日本一の栗を育て上げた男の奇跡のビジネス戦略」。
2012年3月に農業・食料産業イノベーション大賞を受賞、2013年5月には関連会社の有限会社恵那栗が耕作放棄地発生防止・解消活動表彰で農水省農村振興局長賞を受賞。
2014年11月には6次産業化優秀事例として農水省食料産業局長賞を受賞。また2013年には明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科に入学し、2015年9月に終了、MBAを取得した。

「株式会社 恵那川上屋」データ

年  商: 24億円
従業員数: 308名
恵那川上屋HP: https://www.enakawakamiya.co.jp