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トップランナー紹介

川口納豆 門傳英慈氏

Update : 2018.11.06

創業100年を目指す納豆メーカー!鍵は新商品開発と地域貢献

宮城県栗原市。この地で、国産の大豆にこだわった納豆づくりを行い、今年で創業69年を迎える会社がある。有限会社 川口納豆。創業当初から変わらない製法でつくられ、大豆本来の味わいを最大限に引き出した納豆は、全国にファンも多い。
会社の経営を担うのは、門傳英慈社長。老舗納豆メーカーを率いる3代目だ。

「大手メーカーと同じ土俵に上がって納豆を売るだけでは、我々としては、かなり条件的に厳しいですし、地元の皆さんとコラボして、色んなモノを作っていくのが川口納豆の役目だと考えました」と門傳社長は語る。

ターニングポイント
国産・地元産に特化した新商品開発

地元の産物で何か面白いものができないか?そう考えた社長は、一転、米作りに乗り出す。以前から自家用に作っていた米の枠を超え、正式に会社内に米の生産部門を設立した。そのお米から、誕生したのが川口納豆のブランド名を与えられた日本酒。

「川口納豆の存在を知ってもらうこと、話題にしていただくということでは、日本酒の効果は非常に大きいものがありましたね」と社長は言う。

日本酒という他の分野に挑戦したことが話題を呼び、納豆の売り上げ向上にも繋がった。さらに、自社ブランド以外の酒蔵への酒米の出荷の取りまとめや米生産の受託、そして米の販売などその取り組みは大きく広がっていった。

手ごたえを感じた社長が新たに取り掛かった新商品が「納豆せんべい」。自社の米で煎餅を作り、味付けには地元産の仙台味噌を使用。門傳社長自ら、煎餅の名産地である埼玉県草加市で製法を学び開発に成功した。

上写真:社長自ら米作りを行う
中写真:川口納豆栽培の米を使った日本酒
下写真:川口納豆せんべい

この納豆せんべいを作る際に独自に考案されたのが、フリーズドライ製法で作られた「乾燥納豆」。これが新たなヒット商品となる。納豆特有の「ねばり」を除去し、「におい」もほとんどしないため、納豆嫌いな人でも抵抗なく食べられると大人気になった。

左写真:乾燥納豆 右写真:納豆ふりかけ

川口納豆流” ビジネスモデル
生産者を育てる契約栽培を実現

そんな新商品作りに欠かせないのが高品質の大豆。川口納豆では地元の農家と直接契約を結び、仕入れを行っている。「お米はそれぞれの農家が農協に出荷したり、独自に販路を持ってやっています。でも大豆はその部分が非常に少なかったので、お互いがWin-Winの関係になるんじゃないかと考えたんです」と社長は語る。

門傳社長のこだわりの詰まった納豆。川口納豆では「大豆本来の味」を楽しんで欲しいと納豆にタレやカラシは付けない。ごまかしの利かない高品質の大豆づくりを目指すことによって、生産者の意識を高め、生産者を育てることにも繋がると考えたのだ。

さらに、品質の良い大豆は、社長自らが高い値段で買取るようにした(地元での不足分は国内の産地から)。そうすることで生産者の収入も上がり、農地を維持することにも繋がった。全国的に悩みの種となっている「耕作放棄地」の問題。ひとたび農地が荒れてしまうと、再び作物を作れるようになるまでには非常に時間がかかる。農地を農地として保っていくことは、地元の生産者の確保、そして大豆の安定供給にも繋がると考えた。

「地元のモノを使う、それで結果的に田んぼや畑が維持されれば、また人が暮らせるようになる。ですからやはり需要がある物をきちんと作って、そこで長く暮らせるような地域にしていくということが一番の目的ですね」と社長は語る。

左写真:大豆畑 右写真:高品質な大豆

“川口納豆流” 成長戦略
創業100年を目指した地域貢献

地元のモノを使い、人が暮らせる街にする。創業100年を目指すためには地域貢献は欠かせない。門傳社長は地元の養鶏場と提携して、自社の納豆に加え、納豆せんべいを生産する際に出る端材や飼料米などを餌に鶏を飼育。資源を無駄にしない卵の生産にも取り組んでいる。

また、川口納豆では、保育園の経営も行っている。幼児たちの食事には、納豆をはじめ地元の食材を提供し、健康的で安心な食育の分野にも力を注いでいる。

さらに、社長が自ら作りだした商品を集めた、食のギフトセットなども構想中だとか。「基本軸足は地元ですけれども、売り先は必ずしも国内外を問いません。これからは海外の皆さんにも日本の優れた納豆を中心とした和食を、もっともっと知っていただくような努力をしていきたいと考えています」と社長は未来へと夢を馳せる。

上写真:納豆せんべいの端材などを餌に鶏を飼育
下写真:保育園で提供される地元食材の給食

「納豆(発酵食品)は世界を救う!」と語る門傳社長。
新商品の開発に挑み、地域に貢献するその取り組みは、世界へと羽ばたく

門傳英慈氏プロフィール

昭和39年、宮城県栗原郡(現栗原市)に生まれる。昭和60年、岩手大学人文社会学部卒業後、家業である有限会社 川口納豆に入社。
平成12年 宮城県納豆事業協同組合専務理事、平成14年全国農協青年協議会会長(現在は退任)、株式会社日本農業新聞取締役(現在は退任)、平成20年 古川学園高等学校父母教師会会長(現相談役)、平成30年日本私立小学校中学校高等学校保護者会連合会会長に就任。
平成27年 株式会社おむすび保育園(古川福沼園・築館園)開設。川口納豆(もちろん国産!)を提供し、食育を実践。

「有限会社川口納豆」データ

創  業: 1949年
従業員数: 8名
川口納豆HP: http://www.kawaguchi-natto.co.jp/