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トップランナー紹介

コウヤマ 香山勇一氏

Update : 2018.12.10

マーケットイン型農業で付加価値を創造 熊本産のサツマイモを世界に発信

熊本県・益城町。阿蘇の麓に位置するこの地に、サツマイモの生産、加工、販売を一貫して行い、「世界から求められるサツマイモづくり」に挑む、農業のプロ集団がある。
農業生産法人 有限会社コウヤマ。
その取り組みは、およそ25年前。市場に農産物を卸すだけの従来型の農業から脱却し、買う人のニーズにあった「良い芋」を生産していきたいと考えた、香山会長の強い決意から始まった。

ターニングポイント
脱市場に向けた新規販路開拓

サツマイモ栽培を始めた頃の香山会長

香山会長は、葉タバコ農家だった父から事業を譲り受けた際に、葉タバコの裏作としてつくっていたサツマイモを主体にした農業をやろうと考えた。

葉タバコは、霜が降りたり、暴風雨があったりという天候によるダメージが大きく、リスクの高い作物だった。そこで、天候による影響の少ない“根もの”であるサツマイモを作っていこうと考えたのだ。

「サツマイは掘り出してみないとその良し悪しはわかりませんが、自然災害にはとても強い作物なんです。でもその反面“反当収益”が低かったことが大きな問題でした。
ですから先ずは、反当利益を何とかして上げるために、飛び込み営業を開始したんです」と香山会長は当時を振り返る。

こうして1991年、農業生産法人 有限会社コウヤマを設立。
会長は自ら、市場に出荷する以外の販路を探して、地元の菓子店や総菜店に営業をして、契約栽培を始める。サツマイモだけを生産して市場に流していても事業の規模は変わらない。そこで規格外で販売の難しいサツマイモを加工しようという新たな発想が生まれる。

“コウヤマ流” ビジネスモデル
生産・加工を通じたマーケットイン型農業

コウヤマのサツマイモのこだわり、それは“ちょうどいい”商品を提供するということ。会長は、顧客にとって使いやすい「質と量」を提供することを目指した。

「市場に出荷する際の基準は重さでした。でも、顧客が自分でカットして使用する場合、丸かったり、長かったり、細かったりと、同じ重さでもサツマイモは不揃いになってしまいますよね? そこで形を揃えた状態で出荷をすることにしたんです。そうすれば顧客にとってもロスが減るので、結果的にコウヤマに発注してくれることになります。そんな感じで顧客のニーズを把握して、それに合わせた商品を販売してきたんです」と会長は語る。

大きさを揃えるため選別して出荷

生産部門では、例えば、焼き芋用には糖度が高い「紅はるか」など、商品の用途や加工方法に対応すべく、多くの品種を生産。収量を安定させるため「畑の力」を向上させる技術を磨いた。また、出荷部門では、良質なサツマイモの安定供給を実現するため、作付け時期や旨味を引き出すための熟成期間を調整し、顧客が求める量と質に対応した。

さらに、自社で加工工場を開設。地元の郷土菓子「熊本いきなり団子」の製造・販売にも着手し、一般の消費者へ向けた販路の開拓にも力を注いだ。

「“一番いいモノ”とは地元にもともとあった商品なんです。新しいモノを取り入れるという事ももちろん大事ですが、元々あった商品に磨きをかける方がハズレはありません。そんなポイントをおさえた商品のブランディングに取り組んできたんです」と会長は言う。

「熊本いきなり団子」の製造・販売も手がける

“コウヤマ流”成長戦略
世界から求められるサツマイモづくり

コウヤマの成長戦略、それは、世界から求められるサツマイモづくり。マーケットインを実現する上で重要視してきたのが、「安心で安全な生産体制」である。

2011年には、HACCPを取得。さらに2018年にはグローバルGAPを取得。こうして、世界に通用する「サツマイモづくりのプロ」へと進化を果たした。

「お客さんが重要視するのは“食品の安全性”なんです。そこで、工場ではHACCP認証を取得し、農場ではグローバルGAP認証を取得しました。最終的には、日々の生産体制を徹底管理し、安全なサツマイモを顧客の元に届けていく。その積み重ねがコウヤマの歴史になると私は考えています」と社長は語る。

食の安全をベースに、コウヤマでは、サツマイモ商品のさらなる可能性を追求し、ケーキや焼酎といったオリジナル商品を開発。その生産過程で、芋のカットやペースト加工、パウダー化といった、独自の技術も磨き上げた。特にペーストは、焦げや皮が入らない独自の製法で生産しており、和菓子、洋菓子、パンなど幅広く使える商品として、個人や法人を問わず、広く消費者に人気を博している。

上、中写真:安心、安全な生産体制が完備された工場
下写真:サツマイモ加工素材

コウヤマオリジナル商品を開発

また会長は、更なるビジネスの拡大を図るため、2009年から海外展開に向けた取り組みも開始。海外の輸出商談会などに積極的に出展するなど、アジア各国はもとよりヨーロッパ諸国へとサツマイモの魅力を発信している。

「私たちは、苗からサツマイモを生産しているわけですから、いい芋さえつくれたら、それだけで本望なんです」と謙虚に語る香山会長。

サツマイモづくりのプロとして世界と勝負。求められるマーケットのニーズに合わせコウヤマは、新たな付加価値創造を続けていく。

海外の商談会に出展

香山勇一氏プロフィール

農業高校卒業後、家業のタバコ農家に就農。主作物をタバコからサツマイモに転換する。1991年、有限会社コウヤマを設立。2003年、自社商品直売所「芋屋長兵衛 本店」をオープン。加工品の開発や販売も手がけ、海外にも販売チャネルを拡大させている。
2011年 福岡県農業経営アドバイザー、2012年 6次産業化のボランタリー・プランナー(農林水産省)、2017年熊本県農業法人協会 会長就任。

「有限会社コウヤマ」データ

年  商: 3億7000万円
従業員数: 50名
有限会社コウヤマHP: http://imo-ya.com/