ENGLISH

CLOSE

TOP > トップランナー紹介 > セブンフーズ 前田佳良子氏

トップランナー紹介

セブンフーズ 前田佳良子氏

Update : 2019.01.07

人と食と環境の未来を創造! 養豚と野菜生産の資源循環型農業

熊本県・菊池市。阿蘇山の麓に位置しホタルの里としても知られる風光明媚なこの地に、人と食と環境を繋ぐ「資源循環型農業」の実現を目指す会社がある。セブンフーズ株式会社。現在、県内に6ケ所の農場を持ち、年間で約5万頭もの豚を生産する県内最大規模の養豚農場である。

ターニングポイント
養豚を誇れる仕事にする

創業は1970年。かつては300頭ほどの豚を飼育する小規模な養豚農場だったという。その取り組みは、「養豚を誇れる仕事にしたい」と願い、父親の養豚業を引き継いだ前田佳良子社長の強い信念によって動き出した。

「従来の養豚は臭気や汚水などの問題もあって、私が子供だった頃は父の家業に胸を張ることなんて、とても出来ないという状況でした。そんな養豚業を、誇りを持って働けるような仕事にするにはどうしたら良いのか? 先ずはその方法を考えることから始めたんです」と前田社長は当時を振り返る。

左写真:肥育豚舎 右写真:幼少期、父の経営する養豚場で

“セブンフーズ流”ビジネスモデル
臭気や汚水を解決!「セブンシステム式農場」

取り組みの第一歩として前田社長は、「発酵床(バイオベッド)」による糞尿処理のシステムを導入。浄化槽を使わなくても臭気や汚水の問題を軽減することができる“セブンシステム”の開発に成功した。こうして環境にやさしい農場運営が実現したのである。

「セブンシステムは三位一体の仕組みです。まずは、それができる《構造》=発酵床方式の豚舎。そして、それにあった《飼い方》=適正な温度管理、床材の配合や水分率。さらに、豚舎の《発酵床》=豚が排泄する糞尿を微生物が分解。それら3つの仕組みがピタッと三角形に組み上がったときに、セブンシステムは有効に機能するんです」と社長は語る。

環境改善の過程で、前田社長はアニマルウェルフェア(動物福祉)にも着目。狭い檻に閉じ込めるのではなく、自由に活動できるフリーストール飼育や、子豚の圧死事故を防止する分娩ゲージなど、豚にストレスがかかりにくいシステムを導入した。

「私は女性ですし出産や育児も経験していましたから、アニマルウェルフェアを取り入れたいと考えるようになりました。何かと苦労も多いですが、元気な子豚の姿を見るといつも励まされます」と社長は言う。

上写真:「発酵床(バイオベッド)」
中写真:分娩ゲージ 下写真:元気な子豚

さらに、母豚の耳にICタグを付けコンピュータで個体を管理。母豚の体調に合わせ、栄養・体重・健康管理をすることが可能になり餌の量を調整する母豚群飼システムや、自動的に体重を測定し選別する適正体重自動出荷システムなども導入。こうして出荷の条件に合う豚を探すために、豚を追い回すようなことがなくなった。

ICタグによる個体管理

“セブンフーズ流”成長戦略
循環型食品ループ「セブンフーズ式農業」

つくりあげたビジネスモデルにより「誇れる養豚」を実現した前田社長。次なる成長戦略が、“セブンフーズ式農業”。これは、独自に「食品リサイクルループ」を構築し、持続可能な資源循環型農業をつくるという戦略。まずは、食品製造の過程で発生する未利用資源の再利用を目指した。

大手をはじめ約60社の食品メーカーと契約し、年間1万トンを超える食品残渣を広く西日本各地から回収。食べられるにもかかわらず廃棄されるパンやお米・乳製品・野菜クズといった食品を飼料としてつくり直し、豚に与えている。

次に、豚の糞尿を分解したあとの発酵床を完熟堆肥として再利用。周辺地域の農家へ提供すると同時に、自社農場でもその堆肥でキャベツを栽培し食品メーカーへ出荷している。
これらの取り組みによって資源が見事に循環する農業を確立したのである。

上写真: 飼料のもととなる残渣
中写真:飼料タンク
下写真:発酵床の堆肥で作られたキャベツ

父の家業を継ぎ、今では誇りに思う養豚。前田社長が描く未来のビジョンとは?
「セブンフーズ、そして養豚業は、地域や社会にとって必要なものであると発信し続けて、企業自体の存在価値を高めていきたいと思っています。きっとそんなストーリーや理念に惹かれて新たな人材も集まるはずです。そうやって一貫して活動を続けていくことで、養豚業界の未来が“嫌われもの”ではなく、普通の工場と変わらないねと言ってもらえるような仕組みづくりをしていきたい。それを会社のゴールにしたいと思っています」と社長は希望に胸を膨らます。
セブンフーズは、動物・自然、そして人に優しい養豚業の未来を社員と共につくってゆく。

ゆったり育つ豚たち

前田佳良子氏プロフィール

短大の食物栄養学科卒業後、割烹料亭の調理現場にて日本料理の基礎を学ぶ。その後、九州地区に展開する大手スーパーマーケットチェーンに栄養士として入社。メニュー開発等に関わる。1984年、セブンフーズ株式会社入社。2004年代表取締役に就任し、事業拡大に取り組む。1997年、農産物の売買と運送事業を行うセブンワークスを設立。2017年、野菜の生産を中心とした農業生産法人、株式会社ガブレスを設立。

「セブンフーズ株式会社」データ

年  商: 20億円
従業員数: 84名
セブンフーズ株式会社HP: https://seven-foods.com/