Update : 2019.03.02
京都府・城陽市にある水生植物専門の生産販売会社 杜若園芸。地下水が豊富に湧き出るこの地域は、古くからカキツバタをはじめとする「湧水花卉栽培」(=湧き水を使用した生け花など観賞用植物の栽培)が盛んに行われていた。1990年、父の家業を受け継ぐ形で就農したのが岩見悦明社長である。
これまでとは違う企業的経営を目指す上で、岩見社長が開始した事業。それは、潜在的な需要が見込めるニッチな分野の開拓だった。
「カキツバタは、華道だけに使われる花材だったので、カキツバタに代わる何か良い花材はないものかと考えるようになりました。そのことがキッカケで、水生植物を専門に扱う生産者が日本には無いということに気がつくことができたんです」と岩見社長は語る。
岩見社長は、ハスやスイレンといった水辺で育つ植物を園芸業界へ取り入れるべく、自らヨーロッパやアジア各国へと足を運び種苗を入手した。その努力の甲斐あって、今ではそれらの国と直接貿易を行い、500を超える品種の栽培を実現した。
さらに、売り方でも、「水生植物を最初に売り出すにあたって、卸売市場には出荷しないと決めました。作った製品は自らが価格を決めて売り出すというスタンスをとったんです」と社長は語る。
市場開拓の第一歩として、全国のホームセンターに営業をかけ、売場のレイアウトづくりから植物のメンテナンスまでを行う応援販売に力を注ぎ販路を拡大。さらにユーザーに向けては、パッケージにQRコードをつけ、ホームページでの情報提供、新商品の通信販売などインターネットを活用したサービスも充実させた。
「誰もやっていない分野なので、我々が市場を創るというかたちになります。その取り組みの一つが、ハスの花のエキスやスイレンの花のエキスを抽出して、それを使って化粧水やクリームを開発したことです。これらの商品は、いま段々と人気が出てきています」と社長は語る。
水生植物の可能性を追求しオリジナル商品を開発。新たな価値の創造に挑戦している。2017年、ハス・スイレンから生まれた化粧品が完成。その始まりは岩見社長がハスの産地である台湾を視察していたときのこと。台湾でハスが肌の保湿に重宝されていることを知った社長は、帰国後、5年もの歳月をかけ研究を重ね開発に成功した。それが「hasu化粧水Tojakuスキンローション」。年に1度3日間だけ花を咲かせるハス。その開花直前の蕾を丁寧に摘み取り抽出した“蓮プラセンタ”をたっぷりと配合した人気商品である。
さらに、茶所・京都ならではの発想で、ハスの葉を焙煎した蓮茶なども商品化。香ばしさと甘みが広がる上品な仕上がりとなっている。また、アジア全域では普通に食されている“ハスの実”の利用にも取り組みを始め、日本での“ハスの実”を食べる文化の開拓にも挑戦する。これら、様々な分野で6次産業化を進める一方、寺院や企業などへ向けた水生植物の植栽施工管理を開始。都会における癒し空間づくりにも努めている。
「いま農業分野で花卉園芸は衰退してきています。でも我々人間は花や緑によって癒しや安らぎを感じられるものなんです。ですから我々はそういったものを提供しなければならないと思いますし、提供したものによって人々に癒しや安らぎというものを広められたらいいとなと思っています」と岩見社長は語った。
水生植物というマーケットを創造した岩見社長。
これからも新たな分野を開拓し人々に癒しを提供し続ける。
昭和62年、龍谷大学経済学部卒業後、南都銀行に就職。平成2年、家業である杜若園芸に就農。平成17年、第54回全国農業コンクールにて名誉賞・農林水産大臣賞、京都府知事賞受賞。平成19年、代表取締役に就任。平成23年、京都府農林水産業功労者表彰される。平成30年より一般社団法人京都府農業会議理事、城陽商工会議所副会頭を務める。
年 商: 4億円
従業員数: 45名(パート含む)
株式会社杜若園芸HP: http://www.tojaku.co.jp/