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トップランナー紹介

農業法人みずほ 長谷川久夫氏

Update : 2019.03.28

農業者による価格決定権の奪還!適地適作の野菜を海外に発信

茨城県・つくば市。この地に年間30万人が来店する大人気の直売所を創設したトップランナーがいる。株式会社 農業法人みずほ・長谷川久夫社長。
社長は約30年前、農業者が生産だけではなく販売まで責任を持つことが出来る場を作りたいという思いから、『みずほの村市場』を創設した(2013年“直売所甲子園”で優勝)。そのキッカケは、農業で生活ができないという理由からだったという。

ターニングポイント
価格競争から品質競争へ転換

「私が農家の長男として就農をしたときは全く生活の見通しが立たない状況でした。その最大の原因は、自分で作った野菜に自分で値段が付けられなかったこと。その現実を打開するために、みずほの村市場を作りました。例えば、農業者は作った野菜の品質を自ら主張するとともに、その責任をとる。それに対して消費者は、野菜の選択の自由と、選んだ責任を自ら持つ。そういったステージ(舞台)を作れば、お互いに良い関係になれると考えたんです」と社長は当時を振り返る。

こうして長谷川社長は、みずほの村市場の運営を通して、野菜の作り手たちが再生産可能な価格で販売できる仕組みづくりと、安さを売りにしないという意識改革に尽力してきた。

店頭で商品を確認する長谷川社長

“みずほ流”ビジネスモデル
品質向上を促す農業技術の競争

長谷川社長は、みずほの村市場に参入する農業者に対し技術競争を促す独自のルールを定めた。それは、年間360万円の売り上げを目標に、生産から販売までの責任を自ら負うこと。さらに新規参入の場合、農産物の価格は既存の生産者の価格を下回らないということだった。この厳しいルールによって農家たちの意識は、安売りの競争から品質の競争へと180度変化した。現在みずほの村市場では、50軒近い契約農家が生産技術を競い合い、高品質な農作物づくりを目指し切磋琢磨している。

契約生産農家の会田賢一さんは・・・
「直売所では、既存の生産者の価格を下回らないというルールがあり、そうなると品質の競争になってきます。ですから、やはり自分が食べて美味しい、自信がある野菜だけを店頭に並べるように心がけています」と語る。

上写真:「みずほの村市場」の契約生産者たち
下写真:会田 賢一さん

また、契約生産農家の川上和浩さんは・・・
「この直売所は一年を通して同じ値段で販売ができるので安心して野菜が栽培できます。でもその反面、ベテラン農業者の方々との競争にもなりますから、下手な野菜は出せないというプレッシャーも感じています」と語る。

さらに、契約生産農家の片岡喜徳さんは・・・
「味を良くすることで消費者の人たちも値段だけでは選ばなくなると思います。ですから、できるだけ高品質なものを提供するために、私も丁寧にトマトと向き合っています」と語った。

左写真:川上 和浩さん 右写真:片岡 喜徳さん

こうして生産技術の向上に取り組んできたことにより、みずほの村市場で売られている野菜は、『他のスーパーよりも割高であっても、そのぶん高品質である』というブランドイメージを作り上げることにも成功した。

「商品というものは品質の競争なんです。例えば、我々が着る洋服にしても、日常生活で使う家庭用品にしても品質の高さで競争しているわけでしょう?同じように、みずほの村市場に来店するお客様は、ここの野菜が良いから来てくださっているんです。ただ安いからお店に来ているという人は殆どいないと思いますよ」と社長は言う。

花卉、野菜、惣菜、加工品など高品質なさまざまな商品が並ぶ

“みずほ流”成長戦略
適地・適作の『みずほの野菜』を海外へ輸出

農業者の意識改革に成功した長谷川社長が次に目指す成長戦略は、海外での直接販売。社長は2013年、みずほの野菜の輸出を手がける新会社『株式会社みずほジャパン』を開設。タイの首都に、直売所『みずほの村市場バンコク店』をオープンした。
これは採れたての野菜をバンコクまで空輸し、翌日には販売できるという画期的なもの。主なターゲットはタイの富裕層。販売価格は日本のおよそ3倍と高価なものだが、その品質の高さからタイのお客さんにも大人気なのだとか。

タイに「みずほの村市場バンコク店」をオープン

みずほの野菜を現地に空輸して販売

長年培ってきたビジネスモデルを世界へと発信する長谷川社長。その根底にあるもの・・・それは“適地適作”。

「野菜を生産すること・・・“命あるもの“は人間が作っているわけではありません。自然の力が作りあげたものです。ですから農業者は、自然の摂理に沿った環境づくりをしていくことが必要だと思うんです。第一次産業の定義とは地球環境を育んでいくことです。そういった意味で、野菜を作るということは文化産業でもあると思うんです」と社長は最後に語った。

つくば市を拠点に農業改革を推進した長谷川社長。
この先も消費者のため、地域生産者たちを牽引するトップランナーとして走り続ける。

長谷川久夫氏プロフィール

昭和23年茨城県生まれ。(株)みずほ代表取締役社長。(株)ELF代表取締役社長。㈱みずほジャパン代表取締役。昭和42年 鯉渕学園特選科修了後、就農、造園業を経営。昭和62年つくば市議会議員を経て市議会議長を務める。平成2年 有限会社みずほを創業(後に株式会社化)し、農業者に価格決定権を持つ仕組みを構築。平成15年 社団法人日本農業法人協会会長を歴任。平成17年全国直売所研究会会長を歴任。平成22年緑白綬有功章受章

「株式会社農業法人みずほ」データ

年  商: 6億円
契約農家数(正会員): 45名
株式会社農業法人みずほHP: http://www.mizuhonomuraichiba.com/