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トップランナー紹介

前田農産食品 前田茂雄氏

Update : 2019.09.02

小麦は「バトンリレーの作物」 十勝の大地から農業で食と人をつなぐ!

北海道・本別町にある前田農産食品株式会社。ここでは、多様化するパンのニーズに応えるべく、香りや食感が異なる4~5品種の小麦を栽培。さらに、オリジナルのパン用等小麦粉の直接販売を通じ、ベーカリーや消費者から選ばれる小麦を生産する農場だ。事業のターニングポイントは、4代目・前田茂雄さんが抱いた生産者の顔が見える小麦を作りたい!という夢だった。

ターニングポイント
生産者の顔が見える小麦づくり

「小麦は、小麦粉にしないとパン屋さんは使えないですし、私たちがつくる穀物は“おいしい?”と聞く対象が遠すぎて、今まで見えていなかったんです。それを考えると “おいしいパンとは?”ということを小麦から追い求めることで、自分たちが『何をつくったらいいのか』というところに行き着くと思い、色々な品種を作っています。」と前田社長は多品種生産を始めたきっかけを語る。

“おいしいパン”を実現する小麦を作り、生産者と消費者をもっと近い存在にしたいという思いから、前田社長は小麦へのニーズを知る為の取り組みを始めた。

ゆめちからの小麦畑

“前田流”ビジネスモデル
小麦畑とベーカリーをつなぐ交流の場

おいしいパンに必要な小麦とは何かを知るため、ベーカリーと生産者との意見交換の場を作ることを思い立つ。2009年から始まった、地元の小麦生産者や製菓・製パン職人、製粉技師などが交流するイベント「十勝ベーカリーキャンプ」の立ち上げに参画。パン職人とのコミュニケーションを通じて、求められる小麦を具体化していった。

ベーカリーとの意見交換の場「新麦コレクション」

「パン屋さんが求めている小麦が、私たち生産者が知る良い小麦の基準ではないことがわかったのは意外でした。おいしい小麦をつくるには“土づくり”のために土壌改良をしていくことも一つの方法です。また、パンの味の要素として“タンパク“が重要だということもわかったので、小麦の葉に含まれる葉緑素を測定して必要な肥料の量を調整し、タンパク質含有量をコントロールする新しい技術を取り入れ、パン屋さんのニーズに応えられるように挑戦し続けています。」

温暖湿潤気候である日本において、パン等に使用される小麦の国内自給率は3%程度と栽培が極めて難しい作物。前田社長は、パンをつくるベーカリー、そして食べる消費者のため、小麦の品質向上を愚直に追求。

その取り組みは多岐に渡り、自社で収穫乾燥から選別までを行う工場ラインを設け、小麦に含まれる水分率の調整や粒の大きさを厳選。収穫後の品質劣化を防ぐ体制を整備した。

自社工場で小麦の乾燥から選別まで行う

さらに、製粉会社と直接契約をし、自社製小麦100%使用の“香味(こうみ)麦選(ばくせん)”を商品化。小麦というバトンが畑から食卓へとつながれ、念願だった、生産者の顏が見える小麦を実現した。
今では、ベーカリーとの意見交換も全国へと広げ、食を通じた“小麦文化の普及”にも尽力している。

自社製小麦「香味麦選」

前田農産流・成長戦略
「ポップコーンで地域産業の活性化」

小麦で独自の販路をつくった前田社長が次に選んだ作物は、ポップコーン。
「北海道や十勝の畑作農業で課題だったものが、冬場12月から3月までの4ヶ月間の農閑期です。売上増加と雇用維持と農業の可能性の提案として私が見つけたのが、ポップコーンの栽培です。」
前田社長は飼料用(デントコーン)からヒントを得て、ポップコーン用の品種を栽培する輪作体系を導入。作物栽培ができない冬場でも、ポップコーンの加工や販売業務が継続でき、雇用の確保増加が可能になった。

ポップコーン用のトウモロコシ

商品は、国産初の電子レンジで温めるだけというお手軽仕様。出来立てホカホカのポップコーンを子供から大人まで味わえ、「おいしい」を通じて農業の魅力を人々に発信している。

写真左:敷地内に作られたポップコーン工場 ; 施設内は北海道HACCP取得 写真右:製品化されたポップコーン

曾祖父の開拓から120年。この地で農業をしていく前田社長が目指す未来とは?

「『食』から農業を感じられるような事業をこれからも続けていく事が持続的な人づくりにつながり、それが地域産業への貢献になると、僕は信じてやっています。小麦・ポップコーンともう一つ、ひまわり栽培にも挑戦しひまわり迷路などここでしかできない体験型農業をスタッフたちと共に食を畑から提案していきたいです。」

お客様と共に種をまく=食文化づくりを模索する前田社長。この先も十勝の恵みを発信し、全国に“おいしい”を届ける。

写真左:十勝ポップコーンを食べてひとやすみ 写真右:「ひまわり迷路」

前田茂雄氏プロフィール

昭和49年生まれ。本別高校、東京農業大学農業経済学部卒業後、米国大学にて農業経営・流通を学び、多くのアメリカ農家との出会い大規模農業実習を体感。2000年に実家の前田農産食品合資会社に就農。農閑期=付加価値創造期間として活かす付加価値型経営を目指す。
2008年~「農業のファンづくり」イベント等への参画により農業サポーター作りに励む。また季節変動性ある農業収入の多角化と雇用平準化、新畑作輪作体系確立に、ポップコーン栽培開始。2019年~ほんべつひまわり迷路を開催し、関係人口と経済循環を創り持続可能な社会を目指す。
2019年、一般社団法人ナフィールドジャパン代表理事就任。

「株式会社前田農産食品」データ

年  商: 1億5000万円
従業員数: 13人(パート含む)
前田農産食品株式会社HP: https://www.co-mugi.jp/