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2021年5月27日

海外の「巣ごもり消費」に向けた農林水産物の輸出の可能性

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 日本政府が2019年に目標を前倒しした日本の農林水産物・食品の輸出額1兆円に到達できなかったことは記憶に新しい。一方で菅内閣に交代してからも日本の農林水産物・食品の輸出については一丁目一番地の政策として継続しており、2025年2兆円、2030年5兆円の目標額は維持したままである。実際、2020年の農林水産物・食品の輸出額は大方の予想に反してコロナ禍にもかかわらず2019年の9,121億円から9,217億へと1.1%増加しており、8年連続過去最高を継続している。しかし、2020年の内訳を見てみると輸出品目においても大きな異変が起きているように感じる。

図表 農林水産物・食品の輸出額の推移

 2020年の農林水産物・食品の輸出のスタートは前年同月比ベースで1月5.8%減、2月10.7%減、3月9.9%減、4月10.5%減と最悪のスタートであった。これは、2020年前半は旋回中に新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界同時的にロックダウンや移動制限が行われたことによって物流も停滞したことが主な要因だと考えられる。それにもかかわらず、2020年を通して前年を上回ることができたのは8月11.1%増、9月5.5%増、10月21.6%増、11月6.1%増、12月13.6%増と8月以降の猛烈な巻き返しの影響が大きい。
 品目別に見てみると、これまで農林水産物の輸出を牽引していた水産物が2020年は苦戦しており、水産物(調整品除く)が前年同期比22.5%減の1,676億円、水産調整品が15.4%減の600億円となっている。特に減少幅が大きいのが「真珠(天然・養殖)」で76.9%減の76億円となっており、金額ベースで253億円も減少している。これは香港の宝飾展示会の中止が要因となっている。水産物の中で大幅に輸出額が増加したのが「かつお・まぐろ類」であり33.6%増の204億円となっている。これはベトナム向け冷凍ビンナガの増加が要因となっている。
 一方で、水産物以外の品目は増加しており、米を含め穀物等が前年同期比10.5%増の510億円、野菜・果実等が2.9%増の458億円、畜産物が9.0%増の771億円、その他農産物が9.4%増の1,085億円、林産物が2.8%増の381億円、そして加工食品が14.3%増の3,740億円となっている。輸出額の割合から見ると加工食品が輸出を牽引しているのは明らかであるが、筆者が注目したいのは農畜産物である。輸出額の伸び率で見ると「鶏卵」が前年同期比107.4%増の46億円、「豚肉」が55%増の18億円、「ぶどう」が29.1%増の41億円、「いちご」が24.8%増の26億円、さつまいも等の「かんしょ」が21.7%増の21億円「牛乳・乳製品」が20.4%増の222億円と前年同期比20%以上の大幅な伸びを示しており、他にも「牛肉」「緑茶」「花卉」も10%以上輸出額が増加している。特に「鶏卵」は家庭職向けの用途が大幅に増加し、また「牛乳・乳製品」はベトナムで育児用調整粉乳が人気となっている。また、「いちご」については2021年以降の輸出が伸びており1~2月の2か月での輸出量は913tとすでに2020年の年間輸出量の8割に達している。

図表 2020年の農林水産物の主な輸出品目と金額

 つまり、2020年の農林水産物・食品の輸出の動きを分析すると、これまで輸出を牽引していた「水産物」や「牛肉」等、日本食レストラン等の外食向け高級品が苦戦をする一方で、「鶏卵」、「豚肉」、「牛乳・乳製品」、「ぶどう」、「いちご」、「さつまいも」など、世界でも日本と同様に海外旅行ができない分、「巣ごもり消費」での家庭消費向けの品目が伸びているように感じている。
 農林水産物・食品の輸出においては、農林漁業者が自身で輸出を行うにはハードルが高く、筆者は簡単に「輸出をすべき」というつもりはない。しかし、世界中でワクチン接種が始まったとはいえ、日本も含めた世界中でワクチン接種が完了し、昔のように人々が制限なく外食や観光ができるようになるは時間がかかるだろう。つまり、まだまだ国内の「巣ごもり消費」向け販路に農林水産物が押し寄せることが続くことが予想される。その中で海外への「巣ごもり消費」に目を向けて、地域や輸出業者と連携して輸出に取り組むことで新しい販路を築けることができるかもしれない。

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