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食×農の現場から
REPORT | 2026年3月17日

一歩ずつ着実な進化・成長を続ける総合農社   ~ ベジエイト(株)(宮崎)

はじめに

 今回は水稲やさつまいもを中心に134haの生産に取り組むベジエイト株式会社(以下、ベジエイトという。)の重冨代表に話を聞いた。当社は宮崎県都城市での生産を中心に、近隣の契約農家から集荷し販売も手掛ける農業法人だ。総勢105名を超える従業員を率いる重冨代表は、1歩先、2歩先ならず、100歩先をも見据えて、事業に打ち込み、日々の業務を実施する。重冨代表が見据える今後の取組に注目しながら、詳しく話を聞いていきたい。

ベジエイト株式会社 重冨代表

地域の農業生産・集荷を担う

 ベジエイトでは、水稲41haやさつまいも27haをはじめとして、大根やごぼう、ホウレンソウを生産している。全ての生産面積を合計すると、100haを超え、地域一体の生産を担う、トップランナーと言っても過言ではない。取扱量はさつまいも3,500トンをはじめとして、個人生産者ではさばききれない数量を生産・販売している。また、生産だけでなく、集荷業務も実施しており、産地から消費地へ向けた流通網を構築し、輸送・販売も担っている。まさに、地域の大黒柱のような存在だ。
 これらの生産・流通を支えるのは、重冨代表をはじめとする社員40名、パート・アルバイト58名等の100名を超えるスタッフたちだ。地元のスタッフを中心に構成されているが、中には、UIJターンのスタッフや海外実習生もいるという。

ベジエイトでは集荷も担う

さつまいも中心の生産からシフト

 ベジエイトは全くの新規就農から法人化をして13年になる。うち、11年目まではさつまいもの生産をメインとして生産に注力していた。今でもさつまいもは、メインとなる生産作物であることは変わりないが、この2年程はさつまいも以外の品目の生産にも力を入れている。ごぼうの生産がその一つである。重冨代表は「自社が生産する地域も含めて地域一帯がさつまいもの産地であることから競合他社が多く、地域における生産量の上限が見えてきた。ごぼうは生産時期や土壌等の生産における条件が厳しく生産場所が限られるが、都城では生産できる。また、全国の産地リレーに参加できるため、チャンスと捉えてシフトした。」と話す。ゴボウの生産には、土が肥沃でありかつ十分な肥料が必要である。どちらかが不足すると美味しいゴボウは生産できない。その点で、火山培土で黒木地帯である都城の優位性が活かせるのではないかと考え、生産に踏み切った。実際のところ、令和7年度シーズンでは、取扱量1,200トンを見込み、順調に生産量も増やしている。

多岐にわたる業務

 業務内容は、野菜や水稲の生産・出荷にとどまらない。さつまいもの加工や直売所での販売も実施する。主な販売先は自社サイトや通販サイトでの販売、市場外流通、小売販売等であるが、冷凍焼きいも等の加工品の製造を行い、地域内外にさつまいも加工品を届けている。このような取組を実施しているのは、重冨代表の「地域の方々に憩いや交流の場を作りたい」という想いがあるからである。

ベジエイトで販売する冷凍焼き芋

 昨今は、農業分野に限らず物価高の影響を受けており、生産面においてもその影響を受けている。製造原価が高騰している現在において、「生の野菜をそのまま売るだけでなく、加工等にも挑戦していきたいと」と重冨代表は前向きに話す。その一つとして、冷凍野菜への取組も検討している。作物の出来不出来に左右されない事業として、他地域の事例を調査しながら検討を進めており、近い将来、ベジエイトから冷凍野菜を購入できるようになるかもしれない。
 また、農業経営管理システムや在庫管理等のシステム開発も手掛ける。生産者・流通事業者として、在庫が見えていないと管理できないと考え、システム開発の着手に至ったというが、取組はこれにとどまらず、輸出にも活動の幅を広げている。さつまいもやマンゴー等の10品目を取引先から仕入れ、台湾や香港等へ輸出している。実際に2年程取り組んでいるというが、直接輸出をすることには難しさを感じており、現地法人が無いとスムーズに取引が進まない等、日々の挑戦で学び、成長しながら様々な業務に取り組み、拡大させている。

地域に貢献する

 ベジエイトでは、水稲を中心にさつまいもやごぼう等の作業委託も請け負っている。全ての業務を委託しているわけではなく、播種や除草、収穫等の手がかかり、人手が必要な業務を中心に声がかかるという。「ただ作業代行をするだけでなく、効率化を図りながら、試行錯誤し作業委託を受けている」と重冨代表は話す。実際のところ、農作業の機械化を進めており、なるべく人が土に下りない(機械から降りない・ドローンなどを活用して圃場に入らない)農業を意識しているという。農作業にあまり人手がいらない状態になれば全体の効率化が図れるかというと、そうでもないという。というのも、圃場での作業(播種や収穫)を機械化できても、収穫後に実施する選果作業はなかなか機械化が難しいとのことで、ここには人手をかけていると話す。
 選果の機械化が難しいのには様々な理由があるという。例えば、さつまいもの収穫後、コンテナに入れて選果場に運び、コンテナの重量を測るがそのままでは出荷できない。コンテナの外からは見えない部分に虫食いのさつまいもが入っている可能性もあるからだ。そのような出荷が難しいさつまいもを丁寧に選果し取り除き、出荷するためには、まだまだ人の目が必要だと重冨代表は話す。もちろん、全てを人手でカバーしているわけではない。選果・選別に最新の技術・機械を取り入れながら、最終的なコストも勘案し、ベストな状態を検討・試験しながら出荷している。将来的には、選果も機械化しなるべく人手がいらない状態を目指している。

圃場でのさつまいも収穫

作業委託も請け負う

ビジョンの実現に向けて

 重冨代表は、「現在の課題はやりたい取組があっても、すぐに取り組めていない点」と話す。これまでのステージから一つステップアップした新しい取組の実施を検討しており、取組を進めるにあたり、周りの理解や協力を得ながら進めている。加えて、重冨代表は農業という産業を職業に選んでもらえるようなイメージを作っていきたいという思いがあり、Instagram等のSNSでの発信や高校・大学への説明会の参加等、積極的に外との繋がりを作り、若者へ農業を伝えている。昔は農業というと暗いイメージが強かったが、若者に対する発信や様々な取組を通じて農業をポジティブなイメージに変換することで、若い人にも魅力的に感じてもらえている。そのような取組の成果もあり、ベジエイトには若手が集まるのかもしれない。
 ベジエイトのビジョンを「総合農社を目指す」と掲げているように、ベジエイトは日々成長し、業務の幅を拡大しながら、その実現に向けて一歩一歩前進している。やりたい取組にすぐに取り組めていない点を課題と話しながらも、ベジエイトはこれまでも着実に取組の幅を広げ、進化してきた。地域住民や地域生産者、若い担い手を巻き込み、事業を拡大しているベジエイトから、今後も目が離せない。

(執筆:公益財団法人流通経済研究所 研究員 菅原彩華)

企業概要
会社名:ベジエイト株式会社(ウェブサイト
代表者:重冨 裕貴
所在地:宮崎県都城市下水流町3485-1