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大統領選対策で支持基盤の農民を支援

2020年4月30日

トランプ大統領、コロナ対策で農産物3200億円買い上げ
大統領選対策で支持基盤の農民を支援

ニュースソクラ 農業ジャーナリスト、山田優

 
 トランプ米大統領は自らの支持層の人たちには大盤振る舞いをいとわない。11月の大統領再選に向け、農業分野の新型コロナ対策では巨額の直接農家補償の方針を出していたが、4月になって追加を決めた。都市封鎖で売り先を失った野菜やチーズ、肉を米政府が大量に買い上げ、生活困窮者に配るという前代未聞の対策が動き出す。

 「われわれの農家や牧場主は偉大な米国人だ。文句も言わず、彼らはやることをやる」

 トランプ大統領は4月中旬、農業分野でも影響が広がる新型コロナ対策として、ハーベスト・ボックス(収穫箱)政策を打ち出した。農家は大統領選挙勝利のための大切な支持基盤だ。

買い上げ農産物はフードバンクに提供

 
 購入予算総額は30億ドル(約3200億円)を準備。乳製品、食肉製品、青果物の3種類をそれぞれ1億ドルずつ、合計3億ドル分を毎月買い上げ、慈善団体のフードバンクを通じて全米で配布する。困窮者の手元には3種類が詰め合わせされて届く仕組みだ。5月に入って請け負う企業・団体の入札が行われる。

州兵を動員してフードバンクの作業が続いている(7日、米ジョージア州軍提供)

 米国でも学校給食や農産物直売所、レストランの需要が急減している。テレビなどで農家が行き場のない野菜や牛乳を廃棄するシーンが流れている。トウモロコシや大豆、小麦などの農家は所得補償制度で一部が相殺されるが、制度の対象外の野菜や果樹、畜産農家は打撃をもろに受けている。
 一方で米経済活動の急ブレーキに伴い、失業者数は大幅に増えている。昨年9月の米農務省調査では、全米の11%に相当する1430万世帯が生活が困窮し「食料が足りない」状態にあった。新型コロナの混乱の広がりでさらに事態が悪化しているのは確実だ。
 フードバンクを運営する慈善団体からは「食品を求める人が急増し、財源が枯渇してしまう」という悲鳴が上がっていた。全米6万カ所の支援場所を運営するフードバンク業界団体のフィーディング・アメリカは直ちに歓迎する声明を出した。最大手の農業団体である全米農業連合会も「農家も農産物を廃棄するのではなく、誇りを持って最も必要としている人に届けたい」と支持した。

パデュー農務長官が主導 「初めての試み」

 買い上げ政策を主導したパデュー農務長官は「全く新しいアイデアで、初めての試みだ」と電話記者会見で自賛した。
 しかし、アイデアそのものは新しくない。トランプ政権は18年にも同様の収穫箱政策の導入を試みたが、議会や慈善団体から強い反発で引っ込めている。米ポリティコ紙によると、当時開いた米農務省の説明会は抗議の声や退席で大荒れしたという。生活困窮者向けに食料費を与える補充的栄養支援プログラム(SNAP)予算を、大幅に削減する狙いの一環と受け止められたからだ。
 異例の混乱を背景に、収穫箱政策は導入される見通しとなった。一昨年のような大きな反対の声は聞こえてこない。だが、米メディアの中には、政治的な動機に基づいていると指摘するところもある。トランプ氏自身、「効率的に買い上げることでSNAP予算削減につながる」と広言している。

 支持基盤の農家の歓心を買いながら、同時に困窮者支援の連邦予算削減に道筋をつけたいという考えとみられる。共和党支持者の共感を得られるからだ。前例のないパンデミックの中にあっても、大統領選挙に向けた米政治の駆け引きは止まらない。

(ニュースソクラ www.socra.net)

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