EN

CLOSE

コラム

TOP > コラム一覧 > アウトドアビジネスに商機あり!?

2021年12月23日

アウトドアビジネスに商機あり!?

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 コロナ禍によって人々の生活様式が大きく変わる中で、外食・観光産業が厳しい状況に直面している一方で注目を集めているのがアウトドアだろう。今回はアウトドアの代名詞である「バーベキュー」と「キャンプ」について食農ビジネスの可能性について述べたい。

◆バーベキューは横ばいであるものの男性から根強い人気

 図表1は「レジャー白書2020」を基に作成したバーベキューの市場規模と参加人口の推移である。参加人口については多少の上下はあるものの2015年の2,110万人から2019年には1,890万人と緩やかな右方下がりになっている。一方で、市場規模については2016年に約829億円に減少しているものの、概ね1,000億円前後での推移となっている。これは1回当たりの費用が2015年の4,760円から2016年は4,230円に低下したが、2017年5,000円、2018年5,280円、2019年5,370円と上昇していることが要因と考えられる。
 また、バーベキューについては期待できるデータがある。「レジャー白書2020」に余暇活動の潜在需要というデータがある。「潜在需要」とは余暇活動における将来の「希望率」と現在の「参加率」の差のことを指し、“希望があるがまだ実現していない”需要の大きさとして捉えることができる。その「潜在需要」において、全体を上位から見てみると、1位海外旅行(24.3)、2位国内観光旅行(18.5)、3位クルージング(15.3)、4位温浴施設(12.7)、そして5位にバーベキュー(11.5)が入っている。また男女年齢別でみると、バーベキューは男性の全体で4位、10代で4位、20代で3位、30代で4位、40代で2位と根強い人気を誇っている。女性では、残念ながら全体ではバーベキューは入っていないが、年齢別で見ると10代で2位、30代で6位を若い世代では人気がある。さらに、全体の上位である「海外旅行」や「国内観光旅行」は新型コロナウイルスの影響によって移動が制限されており、野外で密にならずにできるバーベキューの需要が高まっている可能性が高い。

図表1 バーベキューの市場規模と参加人口の推移

◆キャンプのマーケットは拡大、特にソロキャンプ、グランピングに注目

 図表2は「オートキャンプ白書2020」を基に作成したオートキャンプの参加人口の推移であり、2015年から5年連続で増加している。特にテレビ番組でキャンプが特集されたり、芸能人やアイドルがキャンプの虜になっていることも人気の要因となっている。最近の特徴としてソロキャンパーや初心者、またシニアのキャンパーも増えており、特に新型コロナウイルスの影響によって密を避けながら外出できる場としてキャンプの利用が増えている。一方で、初めてキャンプをする場合はキャンプ用品を用意するだけでも結構な費用がかかるだけでなく、実際にキャンプに行って設営や料理をするのもハードルが高い。

図表2 オートキャンプの参加人口の推移

 そこで注目したいのが「グランピング」である。「グランピング」とは「魅力的な」を意味する「Glamorous(グラマラス)」と「Camping(キャンピング)」を掛け合わせた言葉である。「グランピング」ではすでに宿泊施設が用意されており、キャンプ用品や食材なども用意されている。特に料理では地元の旬な農畜水産物などが用意されている場合が多く、手軽に、さらに少しリッチにキャンプを楽しむことができるため、全国各地でグランピングの展開が加速している。

◆バーベキュー・キャンプに共通する「体験」要素

 では、バーベキューやキャンプの魅力とは何か?例えばレストランでは消費者が注文したメニューを事業者側が料理して完成品を提供するが、バーベキューでは消費者自らが焼いて食べることになる。同様に宿泊でも事業者側が料理や寝床を提供していたが、キャンプでは自分達でテントを張って料理も作る。つまり、バーベキューやキャンプの魅力とは、消費者が「自分でやる」という「体験」してもらうことによって付加価値を提供するビジネスモデルなのである。
 このモデルは生産者にとってもメリットがある。生産者にとっては本来自ら収穫しなければならないところを消費者が収穫してくれるので、収穫作業を省くことができる。そのため、地方において問題になりやすい人手不足などの課題も解決できる可能性がある。

◆「体験」ビジネスの複合モデルにこそ商機あり

 最後にバーベキューやキャンプにおける課題と解決策についても触れておく。アウトドアビジネスはどうしても土日や夏休み・冬休みといった長期休暇がメインのビジネスになる。また天候によっても大きく左右されてしまうので年間を通して安定した収益を立てづらい。そのため体験農園単独でのビジネスではなく、他の「食農ビジネス」との複合モデルでの検討を進めたい。例えば、バーベキューやキャンプで食材や料理を提供するのであれば、直売所や農家レストラン、農家民宿を併設することで、農畜産物の仕入を効率化する。観光農園で消費者自らが収穫した農産物をバーベキューやキャンプで食べる。さらにはバーベキュー場やキャンプ場を使用して食農イベントを開催するなど、様々な組み合わせが考えられる。
 コロナ禍によって人々の生活様式が大きく変わった一方で、日本では少しずつ人の動きが戻りつつある。しかし、また新たな変異株が拡大するなど、海外旅行などの国を跨ぐ移動はまだ当分できない可能性が高い。だからこそ、地方に人を呼び込むチャンスであり、その地域ごとの「体験」を生かしたアウトドアビジネスを構築して欲しい。

図表3 体験農園の課題の解決策

年別アーカイブ