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2022年10月27日

農林水産物・食品の輸出の伸びはホンモノか!?

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 農林水産物・食品の輸出拡大が著しい。日本政府は令和2年11月に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略(令和4年6月改訂)」を取りまとめ、輸出額2025年2兆円、2030年5兆円のスタンスを崩していない。しかし、この輸出はホンモノなのか。本稿では農林水産物・食品の輸出について違った角度から分析することで検証してみたい。

◆ 農林水産物・食品の輸出額はこの10年間で約2.5倍に

 図表1は農林水産物・食品の輸出額の推移のグラフである。2012年の輸出額が4,497億円であったのに対し、2015年には7,000億円を超えて7,451億円に、2018年には9,000億円を突破、そして2021年についに1兆円を超え1兆1,626億円に到達している。1兆円突破は日本政府が2020年から2019年に前倒ししながら到達できなかった目標であったが、2021年には大幅に突破した。また2022年8月時点では8,826億円となっており、最高額となった2022年を大幅に更新するペースとなっている。

図表1 農林水産物・食品の輸出額の推移

※2020年の(9,217)は少額貨物及び木製家具を含まない数値、2021年の(11,626)は少額貨物を含まない数値。

◆ ドル円相場は24年ぶりの円安水準に

 輸出や輸入といった海外との貿易において、切っても切り離せないのが為替である。図表2は2008年以降のドル円チャートである。ドル円の為替は、100円から110円台というイメージが多いのではないだろうか。しかし、2008年9月のリーマンショック以降、日本は未曽有の金融危機に襲われドル円は急落、2011年には70円台まで急騰(円高)し、当時は円が混乱時の避難通貨とも言われていた。その後、アベノミクスによってドル円は120円台まで下落した後、100~110円台で安定していた。しかし、今年に入ってドル円は急落。新型コロナウイルス感染症による物流の混乱に加えウクライナ情勢も相まって、2022年1月に110円台だったドル円が9月には140円台にまで急落、24年ぶりの円安水準となっている。

図表2 ドル円チャート(2008年~現在)

◆ ドルベースで見た農林水産物・食品の輸出でも増加

 農林水産物・食品の輸出額を為替との関係で考えてみると、世界の通貨に対して円高に振れれば輸出額は減少する。一方で、円安に振れれば輸出額は増加する。そのため、日本円ベースで輸出額が増えているといっても、為替の影響も確認する必要がある。そこで、ドルベースで日本の農林水産物・食品の輸出額の推移を示したのが図表3である。図表1のグラフと比べてみると、2012年から2014年については日本円では順調に伸びているのに対して、ドルベースでは横ばいとなっている。つまり為替の影響が大きい。しかし、2017年以降は、為替が安定している中でドルベースでも確実に輸出額が伸びており、2021年には100億ドルを突破している。また、大幅に円安に振れている2022年においても、現状では昨年と同額のペースで推移している。

図表3 ドルベースでの農林水産物・食品の輸出の推移

◆ 農林水産物・食品の輸出の勢いはホンモノ!

 輸出においては、ドルとの取引だけではなく輸出先の国によって通貨も異なるため、あくまでドルベースの推移は一例である。その上でドルベースで見ると、7年~10年前は為替の影響が大きかった一方で、直近の輸出額、特に2021年の伸びは、これまで日本政府が政策として掲げてきた取り組みが成果となり始めた可能性が高い。
 実際に円安に大きく振れていることもあり、全国各地で輸出に興味を持ち始めた生産者も多い。一方で、輸出においては個々の生産者で取り組むためにはまだまだハードルも高い。そのため、農林水産省ではGFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト:Global Farmer / Fisherman / Forestry / Food Manufacturer Project)にて積極的に情報発信をしている。このチャンスを逃さず、輸出額目標2025年2兆円、2030年には5兆円を達成して欲しい。

図表4 2021年の主な輸出上位品目

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