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食×農の現場から
REPORT | 2019年3月6日

多様なニーズにあわせ「消費者志向」を進めるニチレイフーズ ~冷凍野菜の取組~

我が国における冷凍食品の国内生産量は、2017年(平29年)には過去最高となる160万968トンを記録した。金額ベースでは長らく6千億円台で推移していたものの、2017年には7,180億円となり、2002年(平14年)以来の7千億円台を回復している((一社)日本冷凍食品協会調べ)。
特に注目されるのは家庭用の冷凍食品の増加で、この10年ほどで10万トンほど伸長した。背景には様々な要因が考えられようが、近年の高齢者世帯の増加や核家族化の進展、単身者世帯の増加など、食を取り巻く情勢変化の中で、消費者にとって冷凍食品がますます身近なものになっていることが伺える。

今回は、冷凍チャーハンで市場首位を占めるとともに、「そのまま使える 九州産のほうれん草」など国産の冷凍野菜商品の製造にも取り組まれており、弊機構の「食農塾in熊本」の実証事業(冷凍野菜原料の産地化支援)にもご協力いただいている株式会社ニチレイフーズの木村直司農産調達部長にお話を伺った。

ニチレイフーズ・木村直司農産調達部長

 

日本で初めて冷凍食品をつくった企業・ニチレイフーズ

ニチレイフーズは、株式会社ニチレイの加工食品部門として2005年(平17年)に分社。前身を1942年(昭17年)に設立された「帝国水産統制株式会社」とする冷凍食品企業のパイオニアだ。

前記のとおり、過去最高の生産量を記録した冷凍食品だが、冷凍食品のメリット等を納得してもらうためには、消費者に一度試していただくことがポイントとなるところで、実際に手を伸ばしていただくためのハードルが数々存在してきた。
それは、工場で加工することで「(野菜などの原料の)栄養素が損なわれるのではないか」、「長期保存のための保存料が使われているのではないか」という誤解や、自分ひとりのためでなく家族のために調理を行う主婦などにとって、料理を食べた家族に「おいしくない」「手抜き」と感じられてしまうのではないかといったネガティブなイメージなどだ。
加えて、スーパーなどの小売店の戦略の中で、冷凍食品は「目玉商品」として大幅な値引きの対象となり、安売り価格のみが訴求され品質が軽視されがちなカテゴリーとなってしまう現状もある。
このため、同社では、家庭用、業務用の分野で日々新たな商品提案を行うだけでなく、テレビCMなどのプロモーションを実施し、冷凍食品自体の認知・利用を高めている。その一方で、ホームページや「冷凍で食を豊かに」をコンセプトにしたウェブマガジン等で、冷凍食品の品質や使い勝手の良さを訴求している。

冷凍野菜需要の盛り上がり〜「代わり」から「使い分け」へ

冷凍食品とは、さまざまな食品の品質(風味、食感、色、栄養、衛生状態など)を、とれたて・つくりたての状態のまま長い間保存するため、「前処理を行い」「急速凍結し」「適切に包装し」「食品の温度を−18℃以下で保存」したものの総称だ。主要原料や調理の程度によって、「調理冷凍食品(加工のうえ味付けされたチャーハンや唐揚げなど)」や「農産冷凍食品(コーンやほうれん草など、素材を前処理した野菜)」などに分類される。

近年伸長する冷凍食品市場の中で注目したいのは、上記の「農産冷凍食品」に分類される冷凍野菜の種類の拡大だ。消費量が多いのは依然として調理冷凍食品だが、コーン、枝豆やイモ類といったものだけでなく、ほうれん草などのように解凍するだけで食卓に出すことのできるものや、肉などを加え野菜炒めのセットにしたものまで幅広く商品展開され、売り場を彩るようになってきた。このことは、冷凍野菜商品が、従来の野菜の価格が高騰したときの代わりに“しかたなく”使うものから脱却していることを示すものと見ることができる。

「冷凍加工の技術は年々進化しているが、お客様の中では、“冷凍野菜”というと歯ごたえや味が損なわれておいしくないというかつてのイメージが根強く、技術の進歩がお客様になかなか伝わらない状況が続いてきた。しかし、最近、頻発する天候不良や自然災害等により生の野菜の入手が困難となった際に冷凍野菜をお試しいただいた方々に『冷凍野菜もレベルが上がっているね』という評価をいただけるようになり、家庭用のリピート需要が生まれている」と木村部長は語る。

ニチレイフーズでは、商品の原材料の産地情報をホームページで公開するなどの情報開示にも積極的に取り組んでいるが、特に、同社の冷凍野菜商品に使われる原料の野菜は、国内、海外とも栽培管理状況を確認、トレースできる認定農場で栽培されたものを使用、製品として加工されるまでのすべての工程を追跡管理できるシステムを構築している。また、作物の健全な生長を促し農薬使用量を抑えるべく、長期的視野に立った土壌改良等、生産面での改善にも取り組んでいる。

(同社ホームページより)

このような取り組みが結実し、近年、冷凍食品市場全体として、チャーハンなど調理冷凍食品はもちろん、「(素材としての)冷凍野菜商品の需要も高まっている」と木村部長は話す。
これを受けて、同社では、冷凍野菜が生鮮野菜の「代替」などでなく、生鮮野菜をきちんと補完し、料理する場面や用途によって「使い分ける」ものと消費者の方々に伝わるように、冷凍野菜商品のラインアップとして、「そのまま使える九州産のほうれん草」のほか、枝豆やフライドポテトなど従来から冷凍野菜として利用されているものから、お客様のニーズを捉えて開発された「きざみオクラ」や「揚げなす」といったものまで、さまざまな商品を取り揃える。

ニチレイフーズの冷凍野菜商品の一例(同社ホームページより)

 

「2.5次産業」の発想でより良い冷凍野菜商品をお届けする

最近は、消費者の間でも、冷凍野菜に対して「旬の時期に収穫し急速冷凍するので栄養分が豊富に含まれる」、「マイナス18℃以下で保存するので保存料がいらない」といった理解も着実に浸透し、冷凍食品(野菜)が生鮮を補完するものとして、より身近なものになってきている。
一方、冷凍野菜が身近になることに合わせ、原料となる野菜が国産であることを求めるニーズも高まっているという。
しかしながら、足下の状況としては、財務省貿易統計による冷凍野菜(調製品を含む)の輸入量は、2017年(平29年)で100万トンを超え((一社)日本冷凍食品協会調べ)、2018年には、105万トンと過去最高を更新した。
(独法)農畜産業振興機構が行った「平成25年度冷凍野菜等需要構造実態調査報告書」によると、冷凍野菜の輸入量の増加が続く中、国産の冷凍野菜商品の生産量は毎年8~12万トン前後にすぎず、冷凍食品全体の需要の盛り上がりに合わせて増えているわけではない。

ニチレイフーズでは、この価格等の変動リスクの縮小等に向け、契約栽培方式をとる。加えて、素材の力をできるだけ保持するため、旬の時期に、野菜の生産地の近くですぐに加工を行う。このため、関係工場周辺にある契約農場とは生育期間を通じ密接に連絡を取り合い、細かな生育状態を常に把握できるよう心掛けているという。

メーカーとして栽培工程を管理し履歴が確認できるのは、契約農場をベースとしていることがポイントとなる。このため、天候不良などで不作になったからといって市場などから自由に買い集めるわけにはいかない。逆に、豊作だからといっても手放しで喜べない。野菜という性質上、保存がきかないうえ、工場の生産ラインにも限りがあるため、毎日の生産能力は限られる。供給が天候等で左右される農産物としての野菜と安定した調達が求められる加工品としての冷凍食品(野菜)との調整が常に課題となる。同社では高まる需要に合わせ、中長期の投資計画をベースに、毎年、販売計画を細かく見直すなか、安定的に供給が高められるよう調整に細心の注意を払っていると言う。
「生育が品質に直結するので、野菜が育つ環境から自分たちで安全を確認しないといけない。決まった材料を買ってきて組み立てるわけではないので、代替が効かない。私たちは国産冷凍野菜事業を、一次産業を理解しての二次産業という意味で、『2.5次産業』と呼んでいる」と木村部長は語る。

 

国産冷凍野菜の安定供給への取り組みとは

農産物の価格は、これまで「市場取引」に大きく依存してきた。生産者は、従来から自身の製造原価にかかわらず、出荷した産品をより高く販売することを期待する。このため、契約栽培であっても、豊作のときは(もともと契約した価格で)できるだけ多く買い取ってほしいし、不作のときは(その時の市場価格にあわせ)できるだけ高く買い取ってほしいというのが生産者の偽らざる気持ちだろう。しかし、それをそのまま反映しては、冷凍野菜の小売価格に影響が及び、その価値そのものが損なわれてしまうというリスクを内包する。

今、世の中は、人口減少や少子高齢化の進展等により、大きな情勢変化が進む。そのなかで、食品流通を取り巻く情勢においても、生活様式の変化等による消費者ニーズの変化としての、加工・小分けなど簡便化需要の増加、コンビニやネット通販など販売チャネルの多様化、鮮度・安全性などへの関心の高まり等への対応が一段と求められる。下処理を施した冷凍野菜は、時短、簡便に加え、栄養価も損なわないだけでなく、ごみも出さないという点でも、現代の世の中のニーズにマッチしている。

今回、お話を伺ったニチレイフーズ木村部長のコメントからも、国産冷凍野菜への消費者の根強いニーズを踏まえた冷凍野菜原料の産地拡大への期待は大きく、さらに、新たな商品開発に向け、その他の国産野菜による可能性を模索されている様子がうかがえる。今後、この国産野菜ニーズを受け、冷凍野菜商品を含む、野菜を使用する冷凍食品の製造メーカーと連携した取組みは、生産者にとっても、縮小傾向が続く市場向け生鮮品に代わるひとつの出口として期待できるのではないか。

冷凍野菜の原材料となるほうれん草の畑

この秋から試験栽培をはじめた圃場。冬のあいだはしっかり根を張り収穫時期を待つ。

〔参考資料〕
「平成29年(1~12月)冷凍食品の生産・消費について(速報)」~ 一般社団法人 日本冷凍食品協会(平成30年4月)
「平成25年度冷凍野菜等需要構造実態調査報告書」~ 独立行政法人 農畜産業振興機構(平成26年3月)

(中部支部事務局長 内田文子)