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食×農の現場から
REPORT | 2018年11月27日

生産者と消費者がつくる新しい売り場の提案 〜「フードストアソリューションズフェア2018」への出展

平成30年9月20日~21日の2日間,食品小売業界を対象にした展示会「フードストアソリューションズフェア2018」がインテックス大阪(大阪市)で開催された。
当機構では、昨年度(平29年度)より取り組みを行っている「食農塾in熊本」の一環として、同塾塾生(熊本県の若手生産者グループ)と機構会員3社と共同で出展を行った。

「フードストアソリューションズフェア2018」の概要

本フェアは、関西・中四国を代表する15の流通企業が運営を担う「地域食品企業と小売業の問題解決を目指すフードストアのための展示会」をコンセプトとした、関西地区で初めて開催された大規模な展示会である。(株)阪急オアシスの千野顧問が代表世話人を務められ、初回にもかかわらず期間中、1万1千名を超える来場者を集めた。期間中は200小間を超えるさまざまなブースやコーナーで、活発な交流・商談等が行われた。

 

「地場野菜コーナー」を再現した機構出展ブース

当機構では、食品メーカーや生産者団体等を中心とするの出展の一角に、「生産者と消費者が作る新しい売り場のご提案」として、「食農塾in熊本」の塾生が協力スーパーの店舗で取組中の消費者目線を反映した「売り場」を再現する形で出展。手づくり感あふれるブースながら、できる限り現地の温かみと個々の生産者の商品の魅力を伝えられるよう検討を重ねた。

実際売り場に立つ消費者(子育て主婦)が説明する

生産者と消費者(子育て主婦層)の新しい接点

「食農塾in熊本」では、今年(平30年)5月より、ご協力いただいている熊本市内のスーパーで、同塾の実証プロジェクトとして、塾生が中心となって地場野菜コーナーを運営している。
塾生たちは、一緒に企画・参加する消費者(子育て主婦層、以下「参加者」と記す。)のリクエストに応じ、農産物を作り、取り揃える。一方、参加者の方々は店舗に届いた商品のPOPをつくり、品出しをしながらお客様に農産物の説明をする。時には生産の現場まで出向き生産者へのインタビューをしながら、畑仕事の手伝いを行ったり、農業・農産物への理解を深めていく。

一般の地場野菜コーナーと異なり、事前に消費者の声が反映される

 

塾生とやり取りを深めつつ描かれたPOPには「新鮮」「お買い得」だけでなく、野菜の特徴やメニュー提案、生産工程の安全性を訴えるコメントなどが書き加えられ、参加者独自の視点が反映されている。

「食べてもらいたい」が生み出す可能性

今回の出展には、フェアに来場されたさまざまなスーパーや関係者の皆様から、「大変ユニークな取り組み」として高い評価を得た。また、「これからのスーパーは地元の消費者のみならず、地元生産者との結びつきがますます重要になってくる。この提案はそれに対する有力な選択肢となりうるのではないか」(大手スーパー関係者)とのコメントをいただくなど、産直コーナーが本来持つ意味合いをあらためて確認したものと見ることもできる。

塾生の相談に応じ、参加者がブランド名やロゴデザインを一緒に考えた「あそふるトマト」。濃いながらもすっきりした味わいがファンを作っている

 

産直コーナーの展示方法に関しては、かねて専門家からも「説明やPOPをつけることでもっと売上を上げられるポテンシャルがある」という指摘がある。通常の売り場では産地や価格程度しか選択基準を与えられていないなか、商品の見定めに時間をかけない(かけられない)消費者が、今回のような説明書きが加わったPOPを見る効果は大きい。今までになかった需要を創出し、購買につなげるという点でひとつの有用な取り組みといえるのではないか。

加えて、そのようなスーパーの最前線で、普通の消費者が、スタッフとしてではなく、生産者になり代わって商品を並べ、おすすめをする姿は、お客さまはもちろん、生産者たちの心も動かす。
「(今回の取り組みのポイントは、)参加いただいている消費者(子育て主婦層)の方々が自分の商品を売ってくれていることだ。(消費者と直接話をすることで)自分の勉強になるし、店頭では自分にできないことをやってもらっていて、とてもありがたい。この消費者の取り組みに対し、自分は何ができるのか、どうやってお返しできるのか考えている」と塾生のひとりは話す。
消費者と生産者が交流を深めることで、双方が身近な地域や食の実態・背景を深く理解するようになる。そのことが、単に「売りたい」「買いたい」でなく、「きちんと作られたものを食べてもらいたい」という共通の目的を作り出したのだ。

地元での取り組みはまだ小さいが、商品セレクト、POP作成、プライシング等、消費者(来店者)の声を踏まえて塾生自らが工夫を凝らす売り場として、徐々に固定客が付き、着実に売上を伸ばしている。

こうした取り組みをご紹介することで、あちこちでさまざまな生産者と消費者のつながりが生まれること、双方の距離が近くなり、農産物の流通の変化に結びついていくことを期待したい。

(中部支部事務局長 内田文子)