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食×農の現場から
REPORT | 2019年4月26日

自社生産の野菜を拡充し「選ばれる」売り場づくりを進める~(株)バローホールディングス

東海地方を基盤に躍進を続ける株式会社バローホールディングス(以下、バローHD)は、食品スーパー((株)バロー(以下、バロー))のほか、ドラッグストア、ホームセンター、スポーツクラブなど多彩な顧客接点を持ちながら、仕入れた商品を販売するだけの小売業でなく、製造から流通・販売までを一貫して担う「製造小売業」としてのビジネスモデル構築を目指している。
バローHDは、2003年に一部出資の形で農業生産に参入したのち、複数の新会社を立ち上げ品目の拡大に取り組んできたが、昨年10月、この自社傘下の農業法人4社を統合し、中部アグリ株式会社(以下、中部アグリ)を設立した。

今回は、バローHD常務取締役で中部アグリ代表取締役の篠花明氏(以下、篠花常務)にインタビューを行うとともに、中部アグリの農場のひとつである「Vファーム海津」を訪問し、農業生産を強化する背景は何か、また、今後の目指す方向性等についてお話を伺った。

バローホールディングス篠花常務

中部アグリ設立のねらい

中部アグリでは、Vファーム海津(岐阜県海津市)、郡上きのこファーム(岐阜県郡上市)、東邦産業(三重県尾鷲市)、北信州きのこファーム(長野県木島平村)の旧4社の農場でフルーツトマト、ぶなしめじ、エリンギ、えのき等を生産し、ほぼ全量をバローの店舗に供給している。
篠花常務は4社統合のねらいを、スーパーマーケットをめぐる困難な状況下、他社との差別化のキーは「商品」にあるとポイントを定め、「点在する拠点を組織として統合することでひとつにして、自社商品に関する「ヒト」・「モノ」・「カネ」・「ノウハウ」の集約を図るとともに、ホールディングス内での位置づけも引き上げる」と明快に語る。

バローHDが、このように自社生産の拡大に取り組む理由を整理すると2点となる。
まず、1点めは、他チェーンとの差別化を図る独自商品を開発すること。一例として、自社生産を通じた独自規格と価格設定等により、「バローフルティカ」(フルーツトマト)のようなブランドを生んでいる。
2点めは、市場などからの調達とバランスを確保すること。農産物は天候リスクが大きく、価格の上下だけでなくマーケットの流通減により調達ができなくなることもあるという。自社生産により消費者が欲しいものを常に手に取れるよう安定的に商品を確保することは、同社が目指す強い調達ルートの構築の一環となる。

 

価格と品質のバランスのとれた商品の提供

「自社生産を行うのは、仕入れ価格を安くするためではない」と篠花常務は話す。

中部アグリでは価格と付加価値のバランスを考えた商品設計を行っている。価格面ということでは、中部アグリでは主産地の価格と競争するのではなく、あくまでも各産地の商品と競争のラインに立った上で、「これなら安い」と感じてもらえるポイント(付加価値)を追求しているという。
たとえば、Vファーム海津で生産する「バローフルティカ」は、糖度8度以上のトマトを、通常のミディトマトよりも少し高い価格設定で提供する。この価格設定により、一般のミディトマトに比べ多少割高ながら安定したおいしさが「評価」を生み、多くのファンを獲得しているという。このほかでも、中部アグリ製品は、顧客ニーズを踏まえた容量でのパック化や一次加工等で「お値打ち感」を出す、「地元産」であることをアピールするなど、顧客心理や動き等を分析した商品設計とプロモーションを通じ、差別化を図っていると話す。

圃場では完熟状態のトマトのみ収穫し、週6日のペースで出荷する

バローフルティカのブランドロゴ

「現在、スーパーの顧客の指向は『価格』と『付加価値』に二極化しており、付加価値を重視する顧客の存在とともに、価格をより重視する顧客も増えてきている」と篠花常務は分析する。といっても、もともと「株式会社主婦の店」として生まれたバローHDにとっては、価格重視とはいえ安かろう悪かろうなどではないとの姿勢は基本であり、ここに中部アグリ生産商品が寄与していると言えよう。

 

消費者に選択肢を用意できる調達体制の構築

中部アグリでの生産品目は、現在、フルーツトマトときのこ類の生産に限られるが、将来的には、生産品目をさらに増やすことを目指すと今後の方針は明確だ。しかし、それは自社商品で自社店舗の棚を埋めるということではない。「(自社製品だけが棚に並べるという状況は)社会インフラとしてのスーパーとしてはとんでもない。消費者には選択肢があってこそ(のスーパーである)。」と篠花常務は言い切る。
中部アグリの生産品は、基本的にバローのほぼ全店舗に配架されているという。もっとも、中部アグリの商品であっても、無条件でバローの店頭に並ぶというわけではない。どの品目も競合品とともに陳列され、店頭販売価格や数量の振り分けはバローの商品バイヤーに委ねられているため、当然、中部アグリの出荷単価も全体の市場動向に合わせて決められる。このため、一見、中部アグリの裁量(優位性)は小さいように見えるが、販売先ニーズを確実に把握し計画的に生産ができる自社生産により、出口(売り先)を自社で持っていることは大きな強みだという。加えて、生産・出荷調整等のプロセスにおいて、中部アグリ設立に合わせ新設されたバローHD「アグリ事業推進室」の存在も大きい。

本来、日々の生産量のコントロールが難しい農業生産現場にとっては、収穫できたものは何でもできるだけ高く買い取って欲しいということが生産側の偽らざる心情である。他方、販売側ではいいものを安く仕入れて販売したいし、生鮮品である農産物は必要量が満たされればそれ以上は大きな在庫リスクとなるため、たとえ関連企業の商品であっても様々な判断要素が求められる。

このように両者ニーズには常に矛盾が生じるが、アグリ事業推進室は、持株会社の視点で生産や出荷計画、設備投資に至るまで、両者を調整する。加えて、これまでの農業ではなかなか運用が難しかった安全管理や労務管理等もサポートしながら、バロー店頭に安心な商品を安定して供給するという事業を円滑に進めるための役割も担っているという。

 

Vファーム海津でのフルーツトマト生産

Vファーム海津では、約2.3haのハウスで水耕栽培により、フルティカとアイコの2種類のトマトを生産している。農場がある岐阜県海津市は、夏が高温となる地域のため、メインのフルティカは8〜9月に定植し10〜翌年7月頃収穫する冬春型を主とし、通年供給をめざすため、一部を2〜3月定植、5〜1月収穫の作型も行っている。

農場で収穫・選果されたトマトは、岐阜県可児市のバロー物流センターに隣接する「青果センター」に週6日のペースで運ばれ、パッキングの後、各店舗に出荷されるとのこと。一般的な市場出荷に比べ店頭に並ぶまでのリードタイムが短いため、より新鮮で完熟した状態のトマトを消費者に届けることができる。これも「バローフルティカ」の強みだ。

Vファーム海津の外観

バローHDアグリ事業推進室の髙木室長(左)とVファーム海津の武馬所長(右)

Vファーム海津の北村技術研究員

また、同農場では、フルティカ生産の安定化等も踏まえ、最近、施設を一部増設、昨年からアイコの生産に着手、秋には初出荷を始めている。新施設では、プラントライフシステムズ社と共同でAIとセンサーを取り入れ、より効率的に坪あたりの収量増加と品質向上の両立に取り組むと話す。
この他、きのこに関しては、各農場に加工場を整備するなど、自社生産ならではの消費者ニーズを捉えた加工(カットきのこや石突の除去等)にも取り組んでいるという。

 

野菜の自社生産強化に向けたバローグループの展望

小売業をめぐる競争が激化・困難化するなか、バローHDでは他社との差別化の鍵を既述のとおり「商品」とおく。なかでも、生鮮品の強化がポイントとして、野菜の自社生産の強化に向け、生産品目の拡充を図りたいとの方針だ。しかしながら、農業は投資コストが大きいため、現状では、新設ではなく生産圃場(施設)等の売り物が出たところでの検討を進めていくとの姿勢にあるという。また、選択肢のひとつとして、植物工場にも関心はあるが、植物工場の多くが赤字の現状を考えると、慎重にならざるを得ないとも篠花常務は話す。

バローHDでは、昨年12月に、アークス(北海道札幌市)、リテールパートナーズ(山口県防府市)との3社での資本業務提携によるプラットフォームとしての「新日本スーパーマーケット同盟」の取り組みも発表され、その戦略立案が進められているという。
今後の活動エリア拡大や安定的な良品集荷力のさらなる強化等が求められることが見込まれるなか、お客様に提供する「商品」の強化や調達安定化を目指し、自社生産による扱い品目の種類と量の拡大等への対応に向けた中部アグリの今後の動向には目が離せない。

バローは東海地方を中心にスーパーマーケット、ホームセンター等を展開している(写真はバロー羽島店)

参考:バローホールディングスhttp://valorholdings.co.jp

 

(中部支部事務局長 内田文子)

 

<会社概要>
会社名:中部アグリ株式会社
代 表:篠花 明((株)バローホールディングス常務取締役)
設 立:2018年10月
バローファーム海津は、設立2013年10月、生産開始は2014年2月
資本金:8,000万円((株)バローホールディングス 100 %)
従業員数:129名(うち社員13名、パート116名)
Vファーム海津は、34名(うち社員3名、パート31名)
設立経緯:バローファーム海津(トマト)、郡上きのこファーム(ぶなしめじ)、東邦産業(エリンギ)、北信州きのこファーム(えのき)の4社統合により設立。