2020年8月26日
株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人
2019年に発生した新型コロナウイルスは、2020年に入り瞬く間に世界中に感染が拡大し、我々のライフスタイルを一変させた。まず世界的に行われたのが「人の移動の制限」である。そして国内においても緊急事態宣言以降、外出自粛や休校をはじめ、「接触8割減」や「職場への出勤者7割減」、また、外食業界や観光業界、イベント業界は休業やイベントの中止を余儀なくされた。日本が一丸となって取り組んだ結果、緊急事態宣言は5月14日には特定警戒都道府県以外の39県で、5月25日には全都道府県で解除された。しかし、まだまだ第2波も含めて予断を許さない状況となっている。
このコロナ禍において、農林漁業においても極めて甚大な影響を及ぼしている。特に影響を受けたのが、外食向けやホテル・旅館向け、観光シーズンのイベント向け、そして小中高校が休校になったことによる学校給食向け販路である。愛媛県宇和島では外食向けの販路が失われたことによって養殖真鯛が約300万~500万尾ダブつく可能性があると言われている。また、学校給食向けの牛乳の販路が失われたことによって、農林水産省が『毎日牛乳をもう(モ~)1杯。育ち盛りは、もう(モ~)1パック~「プラスワンプロジェクト」』を4月21日から開始したことも記憶に新しい。
その一方で、緊急事態宣言による外出自粛により需要が伸びたのがEC業界や宅配業界である。いわゆる「巣籠り消費」需要として食品のみならず、農林水産物の需要が大幅に伸びたのである。代表例としては、まず㈱ポケットマルシェの「ポケマル」や㈱ビビッドガーデンの「食べチョク」といった、受注後に生産者が直接消費者に商品を送るマーケットプライス型の企業である。彼らは販路を失った生産者のためのキャンペーンを行っており、生産者の登録数は飛躍的に伸びている。
またネットスーパーの大手であるオイシックス・ラ・大地㈱は従来の宅配モデルに加え、新たに塚田農業や四十八漁場を運営する㈱エー・ピーカンパニーや串カツ田中を運営する㈱串カツ田中HDといった外食企業と連携し、外食企業で取り扱っている食材や料理の販売することで、外食企業および外食向け生産者の支援も始めている。
新型コロナウイルスによって浮き彫りになったことは、開拓した販路によって影響を受けた生産者と全く影響を受けなかった生産者がいることである。また、影響を受けてもスーパーやEC向けにすぐに舵を切ったことで被害を少なくできた生産者もいる。そして、教訓として「生産者が複数の販路を持つことでリスクを分散すべき」と結論付けることは簡単である。
しかし、筆者は生産者だけに押し付けるのではなく2次・3次側も一緒になってこの問題に取り組むべきであると考えており、その解決策として「食農プラットフォーム」を提案したい。これまでスーパーや外食は企業ごとに直接生産者と栽培契約を結んできた。しかし、「食農プラットフォーム」では生産者側は生産者同士でアライアンスを組んで農林水産物を提供し、2次・3次事業者側は、外食企業、ホテル、スーパー、宅配企業、スーパーマーケット等がアライアンスを組んで仕入ルートを共有する。そうすることによって、今回のような事態が起きて一部の業界の販路がなくなったとしても、他の事業者同士で補完することができ、生産者の販路がいきなりなくなるということが避けられる。この「食農プラットフォーム」により仕入ルートを共有することができれば、喫緊の課題になっている輸送コストを下げられる可能性もある。
新型コロナウイルスは日本のみならず全世界に大きな影響を及ぼしており、日本の食産業にとっても大きな転換期と言わざるを得ない。だからこそ、これを機に食農分野でも大きな変革に取り組んではいかがだろうか。