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121カ国が賛成、日本は棄権

2018年12月25日

小農権利宣言が国連で採択
121カ国が賛成、日本は棄権

 国連総会は12月、小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言(小農権利宣言)を、開発途上国を中心とした賛成多数で採択した。一方で、米国、英国、オーストラリアなどが反対し、日本と欧州の多くの国々は棄権した。

小農とその共同体の権利を強調する宣言に対し、知的所有権や農地所有など個人や企業の既得権を手放したくない先進国が難色を示したかたちだ。

国連総会

 国連の場で小農権利宣言が動き始めたのは6年前。小農の活動グループなどが声をあげ、ボリビア政府が提案するかたちで議論が重ねられた。国連総会では121カ国が賛成、8カ国が反対、棄権が54だった。
 
28条の宣言は加盟国に対して、小農の権利を守ることを促した。権利には種子へのアクセス、食料主権、農村女性などが具体的に列挙されている。運動で主導的な役割を担った国際小農運動(ビア・カンペシーナ)は、宣言採択後に「加盟国は誠実で透明性を持って取り組むべきだ」との声明を出した。

▽反対の中心は米国

 反対の中心となったのは米国。会合の議論を報じる国連テレビに映し出された米政府代表の女性は、淡々と文書を読み上げ、宣言の根幹である小農らの集団的権利を次々に否定した。

「宣言にある種子や伝統農法、農地帰還、生物多様性などは目標であり権利ではない」「個人の権利や知的財産権を侵害するものには賛成できない」と主張して、推進側と真っ向から対立した。

 遺伝子組み換え種子や農薬に依存する近代農法は、先進国から途上国へと広がっている。技術の蓄積を持つ先進国の大企業は、種子などの資材供給を通じて膨大な利益を得ている。

 しかも、すでに成熟した先進国の農業市場に比べ、途上国の農業市場は伸び代がはるかに大きい。小農の権利を歌い上げる宣言は、当然のことながら受け入れたくないのが米国の本音だ。

▽先進国は一歩後ずさり

 日本政府は棄権した理由について「人権は当然尊重されるべきだが、種子など個別の権利を上乗せすることは、まだ国際社会で議論が成熟していない」(外務省人権人道課)と説明する。欧州の多くの国は同様の理由で棄権した。

 米国以外の先進国も、農業開発や農地投資、貿易などを通じて途上国とのビジネスを抱えている。真正面から小農の権利を否定しないものの、途上国主導で世界の農業のあり方が仕切られることをあからさまに警戒し、宣言から一歩後ろに引いたように見える。

 総会で採択された宣言は加盟国に対する強制力がないため、ただちに世界の小農の地位が向上し権利が守られることにはならない。日本政府も宣言を黙殺して様子見する方針のようだ。ただ、「小農の権利」が国連の場で正式に採択された重みは別格だ。

 1948年に「すべての人民にとって達成すべき共通の基準」として採択された世界人権宣言が、その後の植民地解放や女性の権利向上、人種差別の撤廃などに果たした役割は大きい。先進国の企業支配に反対する農民運動などに弾みがつくことは確実だ。

(ニュースソクラ www.socra.net 農業ジャーナリスト、山田優)

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