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2019年2月28日

ベジタリアン向け食材に商機

訪日する外国人や輸出に焦点を当て、ベジタリアンやムスリム(イスラム教徒)向けのハラール食品供給に取り組む企業が出てきた。20年の東京オリンピック・パラリンピック大会を控え、国や地方自治体もこうした挑戦を後押しする。しかし、原材料の農畜産物を供給する農業界の取り組みが遅れている。

Halalshop sign Rue de Patay Paris

 千葉県船橋市で2月、「20年に向けた食のインバウンド需要への対応セミナー」が開かれた。県庁などが組織する外食・食品事業者団体が主催し、肉を使わないミートボールやハムカツ、シチューなどが披露された。ベジタリアンというと野菜サラダばかり食べている印象だが、健康な生活を送るため良質なたんぱく質やカロリーを日常的に摂取することが必要だ。

 ベジタリアンと一口に言っても、宗教や信条によって定義は大きく異なる。アニマルウェルフェアの観点でほぼ完全に動物たんぱく質の摂取を拒否するビーガンから「魚や乳製品はOK」という層まで幅広い。

▽大切な情報開示

 自分の信条に合致した飲食料品を、自由に選択できるような配慮が欠かせない。「旅先でも自分の食生活スタイルを守りたい」というベジタリアンの訪日客を取り込むには、多様な食品の開発・提供と、きちんとした情報開示の仕組みがかぎを握る。

 食のバリアフリーを唱える情報提供・マーケティング企業のフレンバシー社が、2017年の訪日客のベジタリアン比率を試算している。発表資料によると、訪日客の中の4・7%、約130万人がベジタリアンで、訪日ベジタリアンの飲食費は約416億円と弾く。20年の東京大会に向けて需要はさらに拡大しそうだ。

▽4社に1社が「チャンス」

 すでに企業は市場獲得に走り出した。日本政策金融公庫が18年1月に実施した食品産業動向調査で、食品関係企業に対して訪日外国人観光客の増加への対応を聞いたところ、4社に1社が「売り上げ拡大のチャンス」と捉えていた。少し前の15年7月の同調査でも、インバウンド需要開拓にすでに取り組んでいるか、計画している企業の3割が「海外の食文化(ハラールなど)に配慮」することの必要性を挙げる。

 ところが、食材を供給する農業界の出足が鈍い。欧州の食品事情に詳しい日本生産者GAP協会の田上隆一理事長は12年のロンドン大会の事例を例に挙げ、「農業団体が主導権を握るべきだ」と強調する。現状は企業の求めに応じて、農業界がばらばらに対応している。

▽レッドトラクターに学べ

 英国の農業団体は早い段階から環境や持続可能性に配慮したフードビジョンを提唱し、国産品のレッドトラクター認証を定着させた。飲食料品企業も受け入れた。

 認証はベジタリアン対策ではないが、食品や農業のあるべき理念を先行させることで、幅広い消費者の支持を得た。個々の食材の情報や履歴もはっきりするため、ベジタリアンやアニマルウェルフェアに配慮する人たちも受け入れやすい。結果として英国産農畜産物の評価を高めた。

 農業界の対応が遅れれば、急成長するベジタリアン市場で、輸入食材が幅をきかせることになる。海外ではハラール向けなど、多様な食材向け専門産地が生まれている。こうした海外産地は信頼性が売り物。個々の商品でベジタリアンが重視する、内容成分、原産地、第三者認証の有無など徹底した情報の明記が特徴だ。手遅れになる前に、国内農業界の早急な戦略作りが必要だろう。

(ニュースソクラ www.socra.net 農業ジャーナリスト 山田優)

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