ENGLISH

CLOSE

コラム

TOP > コラム一覧 > 農業法人のM&A②

2019年6月25日

農業法人のM&A②

弁護士・カリフォルニア州弁護士 大城章顕

 今回も、今後ますます注目を集めることが予想される農業法人のM&Aについて取り上げていきます。農業法人のM&Aに関するテーマの中から、今回はM&Aの方法の選び方について説明していきたいと思います。
 M&Aの方法としては、株式譲渡や合併、会社分割、事業譲渡などいくつかの方法がありますが、その目的を把握することでどのM&Aの方法が適切であるかを判断することができます。そこで、今回は各種M&Aの方法について、その目的を説明していきたいと思います。

会社の取得

 M&Aの方法を大きく分けると、会社そのものを取得する方法と事業を取得する方法があります。
 会社そのものを取得する方法とは、すでにある会社のそのままの形で取得するもの(株式譲渡)と会社を丸ごと取り込んだり、一つにしたりするもの(合併)で、いずれにしても会社全体を取得することとなるものです。これらのM&Aでは、会社を丸ごと取得するということになりますので、例えばA農園株式会社がX県とY県にそれぞれ農場を経営している場合、A農園株式会社を株式譲渡または合併で取得すると、当然ながらX県の農場もY県の農場も取得することになります。
 株式譲渡はその名の通り、株式を譲渡する(=株主が変わる)ものであることから、会社自体はそのまま残りますし、外観も変わりません。そのため、手続きも比較的簡単に行うことができます。
 これに対して、合併は一つの会社になりますので、取得された会社は存在しないことになり、外観も大きく変わることになります。このように、合併は関係者に大きな影響を及ぼすものであることから、その手続きも厳格に定められており、時間もかかります。ただし、一つに会社になることから、効率化をよりはかれるといったメリットがあります。

事業の取得

 もう一つの事業を取得する方法は、会社そのものを取得するのではなく、会社が経営している特定の事業(事業全部ということもあります。)を譲り受けることになります。先ほどの例で言えば、A農園株式会社が経営している農場のうち、(Y県の農場はそのままで)X県の農場での事業のみを取得する場合には、この事業の取得の方法を取ることになります。
事業を取得するM&Aの方法としては、事業譲渡と会社分割がありますが、事業譲渡は事業を譲渡するものではあるものの、構成する資産や負債、契約等を移転させるための個別の手続きが必要になります。一方、会社分割は事業を構成する資産等を包括的に移転させるもので、個別の手続きは必要とされません。
 また、一般的にはM&Aの方法に含まれませんが、農業法人のM&Aの場合には個別の資産譲渡も事業を取得する方法として有力な選択肢です。これは、農地やハウス、農機具など農業のために必要な資産を個別に売買するということになります。

M&Aの方法の選び方

 このように、一口にM&Aといっても様々な方法があり、それぞれ目的が異なっています。まず、取得対象が会社であるのか、それとも事業(特に事業の一部)であるのか、そのM&Aの目的を明らかにすることが重要です。
 そのうえで、取得される会社の規模や移転される資産、負債、契約がどの程度あるのかを把握し、スケジュールも踏まえて、実際のM&Aの方法を決定していくことになります。
 加えて、農業法人のM&Aの場合には農地所有適格法人の要件を満たすことができるかということについても検討する必要がある場合がありますので、農地所有適格法人の場合には要注意です。
 次回からは個々のM&Aの方法のポイントについて説明していきたいと思います。

年別アーカイブ