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農協組織候補で3期目の山田氏 初当選時の半分の21万票

2019年7月29日

参院選 安倍農政への反発が顕著
農協組織候補で3期目の山田氏 初当選時の半分の21万票

山田俊夫氏 農林委員会

 農協が組織内候補として推した自民党の山田俊男氏が7月21日投開票の参議院選比例区で当選した。JA全中の中家徹会長は「3期連続の当選を果たせた」と直ちに歓迎した。しかし、山田氏の得票数は21万7000票にとどまり、6年前の選挙時に比べて12万票、12年前に比べると23万票も減らしたことになる。かつて強大な政治力を誇ったJAグループで何が起こっているのか。

 山田氏の得票数の減少は農業地帯で顕著だ。例えば北海道の場合、今回の得票は7000票で、12年前の2万9000票の3割にも達しない水準まで低下した。東海や近畿など一部の都市部では健闘しているものの、北海道、東北、九州などの主要な農業地帯で集票力が落ち込んだことに、JA関係者は衝撃を受けている。

 業界ごとの組織内候補が顔をそろえる参議院比例区の得票は、自民党内の発言力に直結する。選挙前には農村票を意識し封印していた農協改革や日米貿易協定交渉など、農業関連の政治課題が目白押し。JAグループの地盤沈下を見て安倍政権がこれまで以上に、農業に厳しい態度で望むことは確実だ。

 選挙でJAグループ候補の得票が減ってきたのには、いくつかの理由がある。

 第1はこれまで力の源泉であった農家そのものの数が減っていることだ。農協の正組合員(農家)戸数は430万で近年、大きな変化はないが、実際に農業経営に収入を依存する人の数は大きく減少している。かつて営農から販売、生活の全てで濃密な関係を築いてきたJAと組合員との関係も、変わってきた。「山田候補を頼む」とJAが農家組合員に声をかけても、以前ほどの影響力を持てなくなったのは確かだ。

 第2には安倍農政に対する批判の高まりが、山田候補に強い逆風になったことが挙げられる。農村部の農家の多くは保守的と考えられている。戦後、自民党の主要な支持基盤の一つだった。しかし、強引に規制緩和や市場開放を打ち出す安倍首相の進め方には、反感がつのっている。投票直前に掲載された日本農業新聞による読者モニター意識調査によると、3分の2が「安倍農政を評価しない」と回答した。

 東北地方の1人区で野党候補が健闘した背景にも農家の不満があった。「安倍首相のやり過ぎを政権与党内部から正す」と主張した山田氏だが、十分な理解を得られなかった。

 第3は、山田氏に対する農家やJA関係者の不満もあった。政権に復帰した12年末以降、強引に改革を進めた安倍首相のやり方に対し、山田氏が十分な歯止めにならなかったからだ。「山田議員だけではなく、自民党内で安倍首相に刃向かえる人がいなかった」(JA全国連関係者)というのは事実だろうが、「肝心の時に役立たなかった人を、組織候補として3回も担ぐのはどうか」という声がJA内にはあった。

 山田氏は18年6月に全国農政連の予備投票で、他の2候補を破り組織の比例代表候補に正式に選出された。しかし有効投票292票の中で山田氏が獲得したのは190票にとどまり、組織内に異論があることが分かった。

 東日本のあるJA組合長は「組織では山田候補の活動を決めたが、現場の取り組みは鈍かった。別候補を担ぐか、組織候補を出さないことが必要だったのではないか。他のJAでも同じような状況だったと聞いている」と打ち明けた。

 農家戸数の減少はこれからも止まらない。強い政治力を背景に米価引き上げなどを勝ち取ってきた農協組織は、政治との関わりについて戦略の見直しが迫られるだろう。

(ニュースソクラ www.socra.net 農業ジャーナリスト 山田優)

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