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SHEPプロジェクト参加農家を100万戸に

2019年9月30日

日本政府がアフリカで「儲かる」農業を支援
SHEPプロジェクト参加農家を100万戸に

アフリカの耕作地

 「儲かる農業」でアフリカの地域開発を進めよう。日本政府は9月に横浜市で開いた第7回アフリカ会議(TICAD)で、2つの独自の農業振興策を打ち出した。従来のハコモノ支援の弊害を、農家のやる気を刺激し打開する。
 アフリカで多額の投資を進める中国への対抗策の一つだが、行き過ぎた選別を通じ家族農業の崩壊を招かないか注意が必要だろう。
 日本政府が国際協力機構(JICA)を通じて力を入れるのが、小規模園芸農民組織強化計画プロジェクト(SHEP)と、アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)。いずれも「先行地域の取り組みで十分な効果が期待できることが分かった」(JICA)として、今後対象国を大幅に増やす。アフリカで存在感が薄い日本が主導権を持つ数少ない支援プログラムだ。

▽「できたから売る」を反省

 SHEPは小規模な農家に儲かる園芸を目指してもらう試み。「できたから売る」という昔ながらの農業生産では最近の市場変化から立ち遅れてしまう。農家自らが市場調査し、どのような作物を選ぶかを決めるプロセスを後押しする。行政機関などが上から目線で農家を指導するのではなく、「売れる作物で儲けたい」という農家の気持ちを刺激するのが特徴だ。
 「農家に市場調査の手法を教えるなど教育研修の分野に絞って支援する。あくまでも人づくりで、モノを配るような援助はしない」(同)という。農家が自分で販売まで関わることでスキルを向上させ、効果が長く続くことを期待する。
 2006年からケニアで技術協力プロジェクトとして開発。成功を受けて一気に対象国を広げ、SHEP参加農家を100万戸まで引き上げる目標を立てた。国連食糧農業機関なども後押しする。

▽アフリカ米生産を再度倍増へ

 CARDは08年から始まった。「10年間でサブサハラ以南のアフリカの米生産量を2倍にする」という目標を立て、実現した。ただ、当初描いたような単位収量の拡大ではなく、栽培面積の拡大が生産量を押し上げた側面が大きい。
 今年から始まったCARD2では、30年までに再び米生産量を倍増する意欲的な目標を立てた。生産性向上とともにJICAが重視するのが高い付加価値を狙う点だ。SHEPと同じように、栽培する米の品質を高め、市場でタイ産などに対抗できることをめざす。
 拡大するアフリカの米需要を目がけて、アジアから質の良い輸入米が急増している。たんなる増産では消費者に敬遠されてしまう。
 この2つのプログラムは、「農家が儲ける」というのがみそだ。農家所得が増えれば、農村に質の高い雇用の場が生まれ、若者の都市流出に歯止めをかけられる。アフリカの都市と農村の均衡ある発展に役立つとJICAは説明している。
 安倍首相はアフリカ支援の中で民間活力の活用を掲げ、日本企業の参入を呼び掛けている。CARD説明会の場でも、日本の農機や肥料企業が登壇して、各地の成功事例を紹介した。アフリカから参加した人の多くは、プレゼンの中で語られる近代的な農業の姿に魅力を感じているようだった。
 「儲かる農業」は、安倍首相が日本国内でも一貫して主張してきたスローガンだ。その延長線でアフリカ支援に盛り込んだようにも見える。
 しかし、利益を求めて個別農家がばらばらに走り出すことが、アフリカの農村の発展につながるのだろうか。日本が経験したような過疎や耕作放棄に結びつくことはないのか。むしろ時間が掛かっても、地元の共同体や協同組合の強化が大切ではないか。
 TICAD開催に合わせて、アフリカ南部にあるモザンビークの農民団体代表が来日。JICA支援が結果として小さな農家を抑圧していると批判し、「現地農家の暮らしや文化を尊重してほしい」などと訴えた。
 安倍政権は「中国のアフリカ支援は過大な債務を残しかねない」と批判しているが、日本の支援がアフリカの農村社会に爪痕を残さないような配慮が必要だろう。

(ニュースソクラ www.socra.net 農業ジャーナリスト・山田優)

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