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2020年1月28日

「ジャム」は6次産業化の失敗事例!?

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 以前、行政の関係者と6次産業化の話になった時に『6次産業化で「3J1D」に取り組むと失敗する』と言われた。「3J1D」とは聞きなれない言葉かもしれないがジャム、ジュース、ジェラートの3つのJとドレッシングの頭文字を取ったものらしい(ジェラートは正確にはGelato)。行政関係者が言いたかったのがおそらく、「3J1D」はどの農林漁業者が取り組む6次産業化としては比較的取り組み安い一方で、差別化が難しいので成功するのが難しいと言いたかったのだろう。確かにみかんが特産品の地域の直売所や道の駅に行くと、1コーナー複数の生産者が作ったみかんジャムやみかんジュース当、多様なみかんの関連商品が並んでいる光景を目にする。一方で消費者や観光客の視点からすると、ただ並んでいるだけなのでどの商品が美味しいか選ぶのも難しい。そう考えると「3J1D」の6次産業化は失敗しやすいと思わざるをえないかもしれない。

 しかし、筆者が許せないのは、そういった説明もなく単に「3J1D」は失敗すると言っていることである。実際に全国でジャム、ジュース、ジェラート、ドレッシングに取り組んでいる農林漁業者は大勢おり、今更失敗事例と言われてもどうしようもない。では本当に「3J1D」は失敗事例なのか?筆者はそうは思わない。その理由を前回説明した「6次産業化2.0」、一気通貫型のビジネスモデルを構築することによって「産地」と「産業」の振興に繋がっている事例を用いて解説していく。

 山口県の瀬戸内海に浮かんでいる周防大島(屋代島)でオシャレなカフェを併設しているジャム屋を営んでいる株式会社瀬戸内ジャムズガーデンは平成27年度6次産業化優良事例表彰にてジャム屋として農林水産大臣賞を受賞している。

瀬戸内の風景に溶け込むジャム工房外観.

 当社は自社でもさつまいもやブルーベリー、ブラッドオレンジ、いちご等の農産物を栽培しているが、周防大島で栽培されていない農産物をあえて生産しており、地元で元々栽培しているものは自社では栽培せず、地元の生産者約60戸から仕入れている。ここで特徴的なのがただ市場集荷する農産物を仕入るのではなく、ジャム加工して一番おいしい状態、つまり熟し具合などをジャム加工用に調整した農産物を収穫してもらって買い取っている。栽培期間が長くなると生産者にとってリスクが大きくなるが、その分も価格に上乗せして買い取ったりもしている。

 また、当社は島ならではの当社は小規模であることを逆手にとって、「定番商品は作らない」ジャム屋として年間180種類以上、季節に合わせて常時20〜40種類を揃え、年間約16万本製造している。地元の生産者から無農薬もしくは減農薬で栽培された農産物を糖度40度に抑え、素材の特徴を最大限に活かしている。それだけではない、デザイン性も重視しており、既存のジャムとは一線を画すことによって1本700〜1,000円(最近では2300円のジャムもある)にまで付加価値を高めて販売している。そして、販売面でも工夫をしている。ただジャムとして販売するのではなく、併設のカフェではマーマレードソーダや焼きジャムピザを提供したり、地域のお餅屋さんと連携してジャム大福を企画販売する等、ジャムの新しい食べ方の提案も行っており、当社のジャムのファンとなるお客様がリピーターとなって島に訪れているのである。

年間180種類のジャムが楽しめるジャムブティック

 当社は従来の6次産業化でイメージされやすい規格外の農産物をジャムにするのではなく、「ジャム」に合わせて農産物を栽培し、「ジャム」の種類や味、デザインにこだわり、「ジャム」を使用した食べ方提案まで行うことで、「ジャム」の一気通貫型ビジネスモデルを構築している。そして、「ジャム」が核となり地域の農林漁業者の所得向上・安定化のみならず移住起業家が増えるなど島の活性化にも繋がっており、まさに「産地」と「産業」の振興に繋がっているのである。

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