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2020年2月26日

「プロダクト・アウト」と「マーケット・イン」 6次産業化に必要なのは?

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 『6次産業化には「プロダクト・アウト」ではなく「マーケット・イン」が重要!』こんな言葉を聞いたことがある人は多いのではないだろうか?では、「プロダクト・アウト」や「マーケット・イン」とは何なのか?その語源はマーケティング分野であり、「プロダクト・アウト」はマーケティング1.0と言われ、日本で言えば高度経済成長期で人口が増加している時代、つまり、モノが足りないので「作れば売れた」時代の考え方である。農業では農協が農産物を集荷し、市場を基点に全国へ農産物を流通させる仕組みが機能しており、生産者はひたすら作ることを求められた。一方で「マーケット・イン」はマーケティング2.0と言われ、経済が成熟した中で、消費者がただ商品を買う時代から経済的にも余裕ができて嗜好性が高まったことから消費者のニーズに合った商品を提供しようという考え方である。
 その背景もあり、農業者は農産物を生産してJAに出荷していた「プロダクト・アウト」から、6次産業化によって自ら加工・販売するために消費者のニーズを捉えた商品を作る「マーケット・イン」が重要だと言われるようになったのである。
 しかし、筆者は6次産業化における「マーケット・イン」に一石を投じたい。その理由として、まず一つ目に農業者に消費者ニーズを探るためのマーケティング費用がかけられるかどうかである。大手企業が年間数十億、数百億円をかけてマーケティングして商品開発をしているにもかかわらず、定番商品になる確率は1~2%と言われている。つまり、大手企業ですら100商品を開発して1つか2つしか生き残らないのである。もう一つの理由は、農業者が簡単には品目を変えられないということである。農産物であればある程度品目を変えられるかもしれないが、果樹であれば「桃栗3年、柿8年、柚子の馬鹿めは18年」とも言われるように、簡単には品目を変えることができないのが現状である。
 ではどうすれば良いか?ここで筆者が提言したいのが「徹底的なプロダクト・アウト」である。生産者は意図してか意図せずか、ある品目をずっと生産してきておりその品目のプロと言っても過言ではない。ならその品目を徹底的に追及することによって、他社との差別化を図ってみてはどうだろうか。
 大阪府柏原市にあるカタシモワインフード株式会社は100年以上続く西日本最古のワイナリーであり、平成28年度6次産業化優良事例表彰にて農林水産大臣賞を受賞している。
 大阪府はあまり知られてないがデラウェアの産地であり、以前は大阪府内のぶどう栽培420haの約80%を占めている特産品であったが、デラウェアはワインに不向きと言われていた。他のワイナリーがワイン造りのためにワイン用の品種に栽培を切り換える中で当社はあきらめることなく、デラウェアで美味しいワインを作ろうと10数年にわたり蒸留装置を徹底的に研究・自社開発した。その結果、ブドウの皮を発酵させて蒸留した「グラッパ」がモンドセレクション銅賞や農林水産大臣賞を受賞するようになった。また、20年以上の歳月を費やして開発したスパークリングワイン「たこシャン」は大阪ならではの「たこ焼きに合う」をコンセプトに大ヒットした。まさにデラウェアにこだわり続けたからこそ、その想いやストーリー性が消費者に届いたのである。

 「デラウェア」にこだわり、「デラウェア」のワインを追及する、「徹底的なプロダクト・アウト」によって高品質を実現し、他社との差別化を図っている。これこそまさに「デラウェア」による一気通貫型ビジネスモデルであり、大阪のぶどうの「産地」の振興と日本ワインという「産業」の振興にも繋がっているのである。

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