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2020年3月30日

地球の反対側で実践されている「6次産業化」

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 筆者は2019年4月より明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科(MBS)に入学し、マネジメント及びマーケティングを専攻している。そのMBSの授業の一環として2月5日から2月12日まで南アフリカ共和国に行ってきた。
 外務省のデータ(2018年:世銀)によると南アフリカ共和国は、面積122万㎢(日本の3.2倍)、人口は5,778万人であり、アフリカ大陸において金融及び産業の拠点として日本を含めた多くの企業が進出している。また、昨年日本で開催され、日本が史上初のベスト8に入ったラグビーワールドカップ2019にて優勝したことでも記憶に新しい。一方で、失業率は27.0%と非常に高く経済自体は低迷しており、治安も決して良いとは言えない。産業としてはプラチナ、金、ダイヤモンド等の資源が豊富なことで有名であるが、農業分野では畜産、メイズ、サトウキビ、大豆、かんきつ類、その他の野菜・果物類、ジャガイモ、小麦、羊毛、皮革類が盛んである。その中でもワインは昨今注目されており、日本にも多く輸入されている。
 南アフリカ共和国ではヨハネスブルグとケープタウンを訪問した。ケープタウンでは、東部に位置するステレンボッシュにあるワイナリー「Stark-Conde」を視察する機会があったが、なんとそのワイナリーでは6次産業化を実践していた。「Stark-Conde」は周囲が山で囲まれたぶどう畑の中に蓮が浮かぶ池があり、その横にレストランがある。また池の中心にあるテイスティングルームでは試飲もできる。オーナーは20年前に趣味で始め、当初はケーキを作ってワインと一緒に提供していたが、徐々に訪問客が増えて今では100席を超えるレストランにまで拡大している。

 

 ぶどう畑の栽培面積は30haあり、全てオーガニックだという。収穫したぶどうはレストランに併設されたワイナリーで醸造している。また、ぶどうの搾りかすは発酵させて堆肥にすることで循環型農業も実践していた。特に注目したのが、同じ品種のワインであるにもかかわらず価格が異なっている点(1.5倍~3倍)であった。「何が異なるのか」を率直に聞いてみたところ、値段の高いワインのぶどうはレストランから見える三本松付近の斜面のぶどう畑(標高300m~600m)で栽培しており、平地よりも日照時間が長く、収穫作業は大変であり、希少価値が高いため、値段に反映していたのである。そのような話をテイスティングコーナーで何種類も試飲しながら話を聞き、その後、レストランでワインを飲みながら食事をしながら周囲の絶景を楽しむ。そうすることで、ほとんどのお客様がお土産にワインを買っていく。実際に、一緒に研修に参加した生徒達もワインを購入して飛行機に積みこんで持って帰っていた。
 では、南アフリカ共和国では6次産業化が一般的なのかというとそうではなかった。ステレンボッシュでは約3,500戸の農家と約550のワイナリーがある。その中で6次産業化に取り組んでいるのは約300程度であり、残りの農家はワイナリーにぶどうを出荷しているだけであり収入はかなり厳しいとのことであった。また6次産業化に取り組んでいるワイナリーも小規模がほとんどであり、テイスティングやレストランまで展開しているのは数えるほどしかないとのことであった。
 「6次産業化」は、新興国の位置づけである南アフリカ共和国でも行われており、農林漁業者が加工・販売まで一気通貫で行い、どう自分達で付加価値を高め、消費者にどうストーリー性を伝えるか、そのポイントも世界共通であるということがわかった。そして、今回訪問した「Stark-Conde」は山に囲まれた絶景、池に囲まれたテイスティングルームでの試飲、ワインを楽しみながらの食事までを一体的に繋げることで、見事に6次産業化に成功していた。

池の中央にあるテイスティングルーム

レストラン

 

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