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2020年9月28日

コロナ禍で生まれた新たなラストワンマイル

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 2019年に発生した新型コロナウイルスによって人の移動が制限されたことで、農林漁業者は外食やホテル向け、また観光客向けのお土産、マルシェやイベントへの出店、そして学校給食向け等への販路が突然失われた。緊急事態制限が解除されて以降、学校も再開され、またGo toトラベルキャンペーンが始まった。また、8月25日にはGo to Eatキャンペーンの事業者も決定し、準備が整い次第始まるなど少しずつ経済は動き始めているように感じる。しかし、日本国内でもまだ収束の気配は見えず、特に秋以降はインフルエンザの感染時期とも重なるため、予断を許さない状況となっている。
 一方で、新型コロナウイルスの影響によって日本人のライフスタイルが劇的に変化し始めている。仕事面では時間差通勤およびテレワークの推奨はもちろん、取引先との会議や社内会議、また大学の授業などはオンラインが当たり前になってきている。また、生活面においても食品や生活用品のインターネットでの購入が加速している。実際に上場企業の4-6月期の決算を見ると、ネットスーパーの大手であるオイシックス・ラ・大地㈱は前年同期比で売上高42%増、経常利益3.8倍、アパレルのECサイト「ZOZOTOWN」を運営する㈱ZOZOは前年同月比で売上高19.4%増、経常利益37.5%増と脅威的な数字を計上している。
 こういった「巣ごもり消費」は新型コロナウイルスが収束するまでは継続すると思われ、農林漁業者や食関連事業者はこの新たなトレンドにどう対応していくかが求められている。しかし、一方でなかなか変わらないのがスーパーやドラッグストアへの日用品や食材の買い出しである。緊急事態宣言の最中、東京都の小池都知事はこのような買い物が感染拡大リスクになりうるとして都民に対して「3日に1度」のお願いをし、また各スーパーやドラッグストアが入店規制を行うなどの対応に追われたことも記憶に新しい。つまり、「巣ごもり消費」のニーズが高まりつつある一方で、全てをインターネットで済ませる消費者はまだ一部であり、多くの消費者は買い物に出かけているのである。
 その消費者層をターゲットとした新たビジネスが全国で始まっている。その一つが「ドライブスルー八百屋」である。ファストフードですでに行われている「ドライブスルー」と原理は同じであり、消費者が車で市場などに訪問し、購入した農産物や水産物を事業者がトランクに積み込むことで車から降りずに食材を購入できる仕組みになっている。消費者は自分で車を運転しなければならないものの、スーパーで商品を選ぶ際の「密」を回避することが可能となる。

 もう一つ注目をしたいのが消費者へ個配をする新しい流通モデルである。飲食店への業務用野菜卸や八百屋を展開するベジクル㈱(旧:司企業㈱(東京都))は個人向け宅配サービス「ベジクルフレッシュ」を開始した。これは、地域にある日経新聞の新聞配達店と連携し、新聞配達店の配達網を活用して新聞を購入している消費者へ野菜を宅配するサービスである。この取り組みは2020年4月から開始し、すでに港区、中央区、千代田区、渋谷区、文京区の都心5区にまで拡大している。この取り組みの注目点は消費者への宅配を従来、食品とは全く関係ないものの、消費者宅までダイレクトに新聞を届ける流通網を有している新聞配達店と連携していることである。新聞業界としても携帯電話やタブレット等での電子版が普及することで新聞事態の購読者数が減少しており、まさに地域密着型ビジネスとして新しいビジネスチャンスにもなりうるのである。

出所)ベジクル㈱プレスリリースより

 これらのように、既存のビジネス同士を掛け合わせることによって、消費者への新たなラストワンマイルを創り出すことも可能である。新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかわからない中で生き残るためには、既存の考え方にとらわれずに異業種との連携を図ることも重要ではないだろうか。

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