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2020年10月28日

「生産者だからこそできる」6次産業化とは?

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 2020年も残すところ2ヵ月足らずとなった。そしてこの2020年は農林漁業にとって過去類を見ないなど苦しい年になったと言っても過言ではないだろう。その要因としてまず新型コロナウイルスの感染拡大が思い浮かぶのではないだろうか?確かに観光産業や外食産業、学校給食等の販路が断たれた生産者も多かった。そして、もう一つの要因として挙げられるのが「天候不順」ではないだろうか。7月には九州地方から中国地方、中部地方、東北地方まで日本各地を襲った「令和2年豪雨」があり、さらに7月の日照時間は1946年の統計開始以来最短を記録した。この長雨と日照不足によって農産物の生育に多大な影響を与え、夏場の野菜の価格が高騰したのは記憶に新しい。
 しかし、野菜価格が高騰したからといって、生産者が儲かるかというとそうではない。価格が高騰するということは需要に対して供給量が少ないということであり、天候不順によって農産物の収量が極端に落ちていることを意味する。つまり、豊作であれば供給量が増え単価は下がり、不作であれば単価は上がるが収量が下がるという循環になっているのである。相場に左右されないために、生産者が直売したり、加工することによって付加価値を高めることで「所得の向上」を目指したのが「6次産業化(1次×2次×3次=6次)」である。そして、筆者は改めて「6次産業化」が注目されているように感じている。

 千葉県山武郡横芝光町に株式会社アグリスリーという農業法人がある。当社は法人化する前は水稲や露地野菜を栽培していたが、現社長の實川勝之氏がお父様のケガによって実家に戻ることになった際に「梨」の栽培を始め、それ現在の「城山みのり園」となっている。實川氏はパティシエだった経験を活かし、「梨園をケーキ屋さんのショーケースのように表現したい」との想いを持って栽培管理し、「城山みのり園」は自称「日本一キレイな梨園」として当社の象徴にもなっている。

城山みのり園

梨カレー

 また、当社は農産物加工所が併設されたコミュニティCAFÉ&キッチンLABO「Farm to…」の運営も行っている。そこでは自社の梨園で栽培したこだわりの梨をたくさん使用した「梨カレー」や地元の豚肉と組み合わせた「梨のスペアリブ」が人気となっている。驚くべきはその「梨カレー」には、4人分に対してなんと梨を2~3個使用されているのである。 小売物価統計調査によれば、2020年8月の梨1個の販売価格(幸水または豊水300~450g/個)は全国平均で880円と2015年以降で過去最高価格となっている。極端な話ではあるが、家庭で当社の「梨カレー」を作ろうとすると梨だけで2,000円以上の原価になってしまう。

 しかし、生産現場では生鮮のまま販売できる梨だけでなく、味は同じなのに形が悪い、傷がついている、一部分だけ痛んでいるという、いわゆる規格外品が少なからず出る。そのいわゆるB品やC品を加工に回すことで、「梨カレー」が低コストで作れるのである。つまり、当社は、「A品は生鮮のまま直売」し、「B品・C品は加工して「Farm to…」にてランチで提供」し、さらには「自称「日本一キレイ梨園」で梨の収穫体験」という『生産者だからこそできる』事業のポートフォリオを組んでいるのである。
 6次産業化というと規格外の農産物を「ジャム」や「ジュース」する、いわゆる「6次化商品」の方に目が行きがちである。しかし、6次産業化で重要なことは「生産者だからこそできる」を追求したビジネスモデルであり、是非㈱アグリスリーの取り組みを参考にして欲しい。

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