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2021年2月26日

6次産業化・農商工連携の先にある「ローカルブランド」

株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人

 2011年3月に「六次産業化法(現在の六次産業化・地産地消法)」が施行され、全国各地で6次産業化の取り組みが始まってから早10年が過ぎようとしている。また、3年遡った2008年7月には農商工連携等促進法も施行されており、6次産業化や農商工連携によって全国各地で地域の農林水産物を活用した数多の特産品(加工品)が開発された。中には人気となっている商品もあるが、一方で鳴かず飛ばずになってしまっている商品も少なくない。
 その原因の一つとして、どんなに地域の食材を活用したこだわりの商品だとしても、個々の農林漁業者や2次・3次事業者単体ではプロモーション力、つまりブランディングや消費者へのアプローチ力が弱いことが挙げられる。その解決策として注目したいのが「ローカルブランド」の醸成である。6次産業化や農商工連携では、個々の事業者によるブランディングが中心であったのに対し、「ローカルブランド」ではその地域全体を巻き込むことによって「地域」をブランディングするのである。この「九州パンケーキ」は、宮崎県綾町にて合鴨農法で栽培された無農薬の発芽玄米をはじめ、大分県産の小麦、長崎県産のもちきび、佐賀県産の胚芽押麦、福岡県産および熊本県産の古代米(黒米・赤米)、鹿児島県産のうるち米、そして沖縄県産と鹿児島県産の砂糖を原料としており、乳化剤・香料・加工澱粉など一切使用していない。

 「ローカルブランド」の成功事例として紹介したいのが、宮崎県宮崎市高岡町の廃校をリノベーションした「MUKASA-HUB」に本社を構える㈱一平ホールディングスの取り組みである。当社は「ONE KYUSHU」というコンセプトを基に、九州を一つの島として捉えて「本物の食材」のプロデュースに取り組んでおり、当社を一躍有名にしたのが九州産の小麦・雑穀のみを原料にした「九州パンケーキ」である。

また、各産地へは当社の代表である村岡氏が自ら足を運び、本物と認めた素材を生産者から仕入れている。パンケーキの原料となる「九州パンケーキミックス」は熊本県にある熊本製粉㈱と幾度となく試作を繰り返した末にできあがった。つまり、生産者や2次・3次事業者とのネットワークなくしてはこの「九州パンケーキ」は生まれなかったのだ。

「ONE KYUSYU」により生まれた九州パンケーキ(出所:一平ホールディングス提供)

 この「九州パンケーキ」をきっかけとして「ONE KYUSHU」のネットワークはどんどん広がり始めた。「九州パンケーキミックス」から波及し、2019年に発売をした「セブングレイン(七穀)パスタ」は長崎県の南島原で120年の歴史を持つそうめんの製麺会社である㈱小林甚製麺と連携して開発している。また、「飲んで“ととのえる”新ライフスタイル緑茶」をコンセプトに2020年に発売を開始した「MATCHA MODE」の原料である有機の緑茶・抹茶・モリンガのうち、緑茶・抹茶の生産および微細粉末加工については鹿児島県志布志市で約300haの茶畑を管理する鹿児島堀口製茶㈲と連携している。このように当社は「ONE KYUSHU」をコンセプトに、九州内の生産者や加工事業者をコーディネートする「ハブ機能」を果たすことよって、商品ごとにこだわった品質やストーリーを生み出している。

 この「ONE KYUSHU」という考え方こそがこれからのローカルフードビジネスに求められる。農林漁業者や2次・3次事業者がそれぞれのブランドで発信していくには、労力も費用も時間もかかる。しかし、「ONE KYUSHU」のように地域全体を巻き込んだ「ローカルブランド」であれば、地域のメンバー同士が協力することによって、ブランドの掛け合わせ(ブランド×ブランド)各々のメンバーの消費者(ファン)へのアプローチなど、広告宣伝費を軽減させ、かつ最大限のPR効果を生み出すことができる。特に地方においてはその地域でしか食べられていない伝統料理が数多く存在している。そのオリジナリティを活かすためにも、地域の伝統文化を次世代へ繋いでいくためにも、地域全体を巻き込んだ「ローカルブランド」の醸成を期待したい。

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