2021年3月26日
株式会社食農夢創 代表取締役 仲野 真人
クラウドファンディングによる資金調達や新規ビジネスが加速している。筆者の周りでもクラウドファンディングを行っている事業者が増えている。また、来年度から農林水産省で新しく始まる地域連携プロジェクト(LFP)において、テストマーケティングにクラウドファンディングを活用することを組み込んでおり、デジタル化が進む中ですでにクラウドファンディングは無視できないツールとなっている。
クラウドファンディングとは「クラウド(群衆)」と「ファウンディング(資金調達)」を掛け合わせた造語であり、不特定多数の人から少額ずつ集める資金調達方法である。従来は新しいビジネスを行う場合、事業者が資金を先に集めてから商品やサービスを開発しなければならなかった。しかし、クラウドファンディングを活用して事業者が「こういうビジネス(取り組み)を実現したい!」という目的に対して、それに共感する「支援者」から先に資金を集めて事業ができるのがクラウドファンディングの特徴である。
クラウドファンディングは大きく①購入型、②寄付型、③投資型の3つに分かれるが、農林漁業の特性上、本稿では「購入型」をテーマに述べる。「購入型」は事業者が取り組みたいプロジェクトに対して支援者が出資したリターンとして商品やサービスを得る仕組みであり「支援者=購入者」となる。つまり、生産者が自ら生産した農林水産物を使用して新しく開発する加工品やサービスに対して先に支援者から資金を集めることによって開発費用を調達できるばかりか販路の確保にも繋がる。また、事前に支援者を募集することによって商品やサービスについてのマーケティングも可能となる。そして、プロジェクトが成功した場合のみクラウドファンディング業者に手数料を払うので資金面のリスクも押さえることができる。
このように書くとクラウドファンディングはメリットばかりのように感じるかもしれない。実際、筆者が参加したセミナーで「クラウドファンディングはリスクがないので、どんどん活用してください!」と力説する講師がいた。
では本当にリスクがないのか?実は筆者は6次産業化エグゼクティブ・プランナーとして支援している案件で3月1日よりクラウドファンディングを実施している。まだ実施中であるが、企画から準備、そして実行までの間で感じたことは「リスクは多分にある」ということであった。確かに費用面でのリスクは抑えられるが、それに関わる人件費などは当然成功しないと手弁当になってしまう。また、プロジェクトが失敗した場合は実行者のブランドにも傷がつく可能性がある。そして、現在筆者が経験しているように、プロジェクトの実施期間中は成功するかどうかと精神的な負担も非常に大きい。
その上で、クラウドファンディングはまず何のために行うのか「目的」が明確であることが重要である。冒頭でも述べたが筆者の知り合いだけでも複数のプロジェクトが募集をしており、その「目的」が消費者に共感してもらえなければ見向きもしてもらえない。また、クラウドファンディングを開始したら勝手に資金が集まるわけはなくプロモーション(広報戦略)が特に重要である。これについても「SNSで発信すれば良い」と安易に考えがちであるが、これだけ情報が溢れている中でただ発信してもすぐに埋もれてしまう。そのため、事前に発信のある人(インフルエンサー)への協力依頼、メディアへのアプローチ、そしてSNSにおいても何の媒体(Facebook、Instagram、Twitter等)でどういうターゲットに向けて発信するかなどを念入りに検討しておく必要がある。
クラウドファンディングの認知度が高まるにつれてマーケット規模も大きくなっており、間違いなくビジネスチャンスは広がっている。その一方で、活用する事業者も増えており、徐々にレッドオーシャン(競争激化)になりつつある。特にクラウドファンディングの成否に重要なプロモーション戦略は生産者が弱いとされている部分である。しかし、クラウドファンディングはプロモーション力を鍛えるにはもってこいの場であり、是非、臆することなくクラウドファンディングに挑戦することでプロモーション力の強化とビジネスの拡大に繋げていって欲しい。
筆者が実施中のクラウドファンディング「GABA茶プロジェクト」
https://readyfor.jp/projects/tirantya