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2024年1月25日

農林漁業者のための「提案書」の書き方

(公財)流通経済研究所
農業・環境・地域部門 部門長/主席研究員 折笠 俊輔

■提案書をつくるポイントを知ろう

 農林漁業者の皆様が、提案書を書く機会が増えてきている。省庁や役所に補助金の申請書を出すとき、あるいは販路となる顧客へ商品を提案するときなど、提案書をつくったり、プレゼンする機会が少なからずあるだろう。
 今回は、農林漁業者に向けた提案書をつくるためのポイントについて書いていきたい。

■基本的な構成を考える

 何かの「提案」を行うときの提案書には、基本的な構成がある。今回は補助金の提案書のイメージで説明しよう。

<提案書のイメージ>
1.背景と目的         
2.事業の目標         
3.事業内容          
4.期待される効果      

1背景と目的
 提案書を見る人の視点で考えた場合に、背景と目的は極めて重要である。
 例えば、「我々の経営においては、規模拡大よりも単価向上を目指す方が効率的である」という文章があった場合、自分は自社の経営状況を知っているから疑うことなく納得できるが、これを初めて見た人は規模拡大が何故ダメなのか分からず納得することは難しいだろう。初めて見る人の気持ちになった場合、単価向上を目指すことになった背景をもう少し丁寧に説明しなければならない。
 背景と目的をしっかりと、見る人の視点で記載することで提案書を見る相手が提案する自分たちと同じ目線になることができるのである。

2.事業の目標
 自分たちが提案する内容で、何を達成しようとしているのかを明確にすることが重要である。そういった意味では、この事業目標ではできるだけ具体的かつ、定量的であることが望ましい。
 例えば、「この取り組みによって、輸出量を大幅に増加することを目指す」という目標を立案したとする。しかしこれは非常に曖昧であり、提案を受け取る側として「補助金を出す」、「事業連携をする」といった意思決定を行うには情報が足りない。この目標を具体的かつ定量的に置きなおす場合、「この取り組みによって、〇〇国への輸出量を〇〇%、●●国への輸出量を●●%増加する」という記載になる。このように具体的に数字が入ることで、効果の検証も可能になる。目標●●%に対して、実際どうだったかを数字があるから検証できるのである。「大幅に増加する」という記載の場合、何%増加すれば「大幅」と言えるのかわからない、ということになりがちである。よって、目標は具体的・定量的に設定することが肝要である。

3.事業内容
 どのようなことを実施するのかを具体的に記載する。この記載にあたっては5W1Hを意識すると書きやすくなる。

4.期待される効果
 これは提案書において、最も重要な内容のひとつである。提案内容を実施することで、誰にどういったメリットがあるのかを明確にする。ここで重要なことは、自社のメリット、提案先の事業者のメリット、社会的なメリットの3つに触れることである。
<自社視点>
 この提案内容を実施することで、
・自分の会社・農業法人にどんなメリットがあるか(自社にメリットがあることを説明できないと、そもそも何故、その提案を行うのかを理解されないことがある。)
<提案先視点>
・(提案先が企業の場合)この提案を受け入れることで、どのようなメリットが提案先にあるか(売上や利益があがる、社会的価値が高まるなど)。
・(提案先が行政の場合)この提案を実施することで、補助金の執行額に見合った効果が見込めるか。

<社会的視点>
・この提案を実施することで、周囲の環境や人間に対してどのようなメリットがあるか(SDGs視点で、提案にはどのような価値があるか)。
このように、自分にもメリットがあり、相手にもメリットがあり、SDGsにもつながる、といった「三方良し」を意識した提案を考えることが、現代の提案づくりには極めて有効である。

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